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「その傷はどうした?半人半妖になる前に受けた傷か?」 「今から死にゆく者に、教えてやる理由はあるのか?」 周囲を山に囲まれた盆地の中の崖に立つ二つの人影がそこにあった。 「いや、両腕があればなんとか…といったところだろう。お前…それほど強くて、なぜNo5に留まっている?」 「悪いが、それに答えてやる理由も無いな」 隻眼の戦士が剣を構え、両腕を失った戦士にその切っ先を向ける。 両腕が無い戦士が目を閉じる。 剣を握れぬ以上、反撃することもできず観念したのだろうと隻眼の戦士は判断し、すれ違いざまにその剣を振り下ろした。 (全てが済んだら必ず返しにくる。だからお前も必ず生きていてくれ) (心配しなくても私はそう簡単には死なん) 微動だにしなかったが、数刻前にした会話が頭に浮かび、体が反射的に動いた。 「……どういうつもりだ?」 「すまんな、まだ死ねんようだ」 振り下ろした剣から血が落ちているが、右肩を少し切断しただけだ。 「両腕を失ったお前に何ができる?」 「出来の悪い弟子に触発されたようでな…元No2の首、そうそう簡単に取れると思うなよ」 妖力解放。瞬時にその場から離れ崖を飛び降りる。 「…チッ、隠遁したいたとはいえ、かつてNo2だっただけの事はある」 追おうとするが、スデに姿は見えない。 こうなってくると、元来の妖力の大きさは向こうが上なだけに、こちらも妖力解放せねば追いつけないが、 隻眼の戦士にはそれはできない。 「…妖気は外に漏れ出ている…ガラテアに任すか」 片目を失った日から何のために妖気を抑え続けてきたのか。 その目的を果たすためには、こんなところでそれを無に帰すわけにはいかない。 妖気を探るが、突如として気配が消えた。 「消えた…?妖気を消す薬を持っているとは思えないが…どういう事だ?」 同時刻―少し離れた森― 借りたものを借りた戦士が、森の中を歩いているが突如、右腕に違和感を感じた 「イレーネ…?何か今…右腕が…な、何だ…?何か…とんでもないものが…くる!」 何か違和感を感じたが、遠くの方から木をなぎ倒すような音と、凄まじく強大な気配が近付いてきてそれどころではなくなった。 「あら、こんにちは。奇遇ねぇ、こんなところで会うなんて」 さらに同時刻―トリステイン魔法学校― 「宇宙の果てのどこかにいるわたしのシモベよ 神聖で美しく、そして、強力な使い魔よ! わたしは心より求め、訴えるわ…我が導きに、答えなさい!!」 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、現在サモン・サーヴァント二回目に挑戦中。 一回目は綺麗なクレーターが地面に残るぐらいの爆発が起きた。 それはいつもの事なので、野次が飛ぼうと気にしない。 MY予想では47回は爆発する覚悟でいるのだから…ッ! だが、予想に反して変化は2回目の爆発に訪れた。 煙が収まるにつれ何かの影が見えたのである。 「…や、やった!」 そう喜ぶが、それも長くは続かない。 その影が動くと、人の形になったからである。 この場合、考えられる選択肢は亜人、ゴーレム、人間のどれかなのだが、 召喚者の実力を非常によく知っている者達からすれば人間、それも平民だという流れになるのは当然だ。 「サモン・サーヴァントで平民を呼び出すなんてさすが『ゼロ』だな!」 「~~ぅるさい!まだ分からないじゃない!!」 「魔法も使えない『ゼロ』なんだから平民しかないじゃないか!」 周りが嘲りを含む笑いに包まれるが、煙が晴れ、その姿を見てぶっちゃけ全員凍りつく事になった。 女性ながら身長180サント前後の長身。 腰にまで届くかという、色素が抜け落ちたかの様な混じりけの一切無い銀色の髪。 鋭さを備えた銀色の瞳。 そして、尖った耳。 以上の事から、生徒及び引率の教師が導き出した結論は唯一つ。 『どう見てもエルフです。本当にありがとうございました』 「「「「ぜぜぜ、ゼロのルイズが…エルフを召喚したぁぁぁぁ!!!」」」 そう叫ぶと同時に、周りに居た生徒が一斉に距離を空ける。 残っているのはハゲ頭の教師と呼び出した当人だけだ。 ルイズはルイズで、動けないでいるだけなのだが。 もっとも、イレーネもイレーネで状況が掴めないでいる。 覚えている限り、自分が居た場所は周囲を山に囲まれた盆地で、こんな開けた平原ではない。 何より、周りに人なぞ居なかったはずだ。ラファエラから逃れるため妖力解放したとしても、こんな場所に瞬時に着けるはずもない。 周りが怯えた様子なのは別に気にしなかった。 銀眼と言えば半人半妖のクレイモアと呼ばれる戦士しか居ないのだから、恐れられて当然の事だ。 だが、自分の体に違和感を覚え視線を右に向けた時、思わず衝撃が顔に出そうになったものの、 辛うじて堪えた。 伊達に、片腕のみの妖力完全解放というロクでもない技を顔色一つ変えずに使うだけの強固な精神力を持ってはいない。 (クレアに与えた右腕が…あるだと!?) 己の妖力を探り、それをほとんど使い果たしている事に気付くが、正直な所納得いっていない。 (攻撃型の私が、あの短時間で…しかも意識を失っていたというのに右腕を再生したというのか…?) 崖から飛び降りた時、何か鏡のような物に当たった気はするのだが、 さすがに防御型ではないからには、理由は分からないにしろ再生できたとしても、常人と同じ程度の力しかない。 (状況が掴めんが…聞けば分かるか?) 辺りを見渡すが、周囲に居るのは距離を空けている少年少女達と、ハゲ頭が眩しい中年男、 そして呆然としている桃色の髪の少女だけだ。 この場合、状況的に見てハゲの中年がこの場の責任者だろう。 そう判断し、問いただす事にしたのだが…色々ビビッているご様子。 クレイモアが現れる場所=妖魔が潜伏している、とでも思っているのだろうと判断したが、どうも周りからエルフなどという聞きなれない言葉が聞こえる。 「悪いが訊きたい事がある」 「な、なんだね…?」 「ここはどこだ?なぜ私はここに居るんだ?」 教師は言葉に詰まった。 下手に『ここはトリステイン魔法学校で、あなたを生徒の使い魔として召喚した』などと言えば、先住魔法を喰らう恐れがあったからである。 『炎蛇』の二つ名を持つ彼でも、先住魔法を行使するエルフの相手は荷が重過ぎる。ましてや、生徒を守りながらなど…。 どう答えようかと必死こいて悩んでいたが、別方向から答えが返ってきた。 「こ、ここはト、トリステイン魔法学校よ」 「トリステイン?聞かん名だな」 聞かない地名だったが、組織と戦士の活動地域は47もの地区に分けられた大陸にあるのだ。 文明Lv的にもほとんど変わりないので、よもや別世界などとは微塵も思ってはいない。 「ミスタ・コルベール…!も、もう一回召喚させてください!!」 「…それは駄目だ、ミス・ヴァリエール。春の使い魔召喚の儀式は神聖なものだからやり直しはできないのだよ」 「で、でも…エルフを使い魔にするなんて聞いた事がありません!」 少々考え事をしている横で『使い魔』だの『エルフ』だのワケの分からない単語が飛び出ている 「話し込んでいるところ悪いが、今一状況が掴めん。説明してくれないか?」 その銀色の威圧感たっぷりの目で二人を見据える。 (うう…怖い…。でも、使い魔って事分かってないみたいだし…やるなら今しかないかしら?) 「説明したいから、ちょ、ちょっとしゃがんでくれない…?」 「いいだろう」 目線が合う高さまで頭を下げると、ルイズが杖を目の前で振り 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 等と呪文らしき言葉を唱え、目を閉じ顔を近づけてくる…。 ギン! という音がしたような気がし、目を開けるとえらいモノが飛び込んできた。 「ふぇ…?目の…色が変わってる!?」 今の今まで銀色だった瞳が金色に変わり、何だかよく分からない妙な気配が漂っている。 その瞬間、まずい!と心の底から思った。 例えるなら、蛇に睨まれた小動物のような絶対的捕食者に対する恐怖。 そして、まばたきをした瞬間、その姿が掻き消えていた。 「ど、どこに…!?」 周りを見回すが、どこにも姿は無い。 そうやってあたふたしていると、後ろからえらくドスの効いた…何かこう殺気混じりの声が聞こえてきた。 「…その趣味は無いんだが、何て事をしてくれるんだ?」 恐る恐る後ろを振り向くと、こちらを見下ろしている鋭い銀眼と思いっきり目が合った。 (目の色が戻ってる…というか、何時の間に!?) 瞬きはほんの一瞬。その隙に後ろに回り込むなど到底不可能だ。 「せ、せ…先住魔法だ!!」 そんな声があがると同時に、生徒達が空を飛び逃げ惑う。 残りの妖力といっても、実際は瞳の色が変わる程度しか残っていなかったのだが、 『微笑』のテレサという桁外れの存在でNo2に甘んじていたものの、歴代No1にも匹敵する力の持ち主である。 『疾風』のノエル程ではないが、一割程度の妖力解放でも瞬きの瞬間に背後を取るなど容易い事だ。 …まあ、そのありえない移動速度を目の当たりにして、生徒達はエルフの使う先住魔法と判断し逃げたのだが。 その飛んでいる姿を見て、驚いたのはイレーネも同じだ。 「飛行型…妖魔か!?」 そうは思ったが、飛行型とは言え妖力を全快にせず人間の姿のまま空を飛ぶなどありえない事だ。 妖力探知も行うが、やはり妖気なぞ微塵も感じられない。 「…そういえば、魔法とか言っていたな。しかし、そんなものが存在するとは聞いた事も無い」 「…魔法を知らない?…エルフじゃないの?」 「エルフというのがどのようなものかは知らんが、私が居た場所では我々は『クレイモア』と呼ばれている」 「き、君は一体どこから来たというのだね?」 「その前に、私が何故ここにいるかという事を説明してもらいたい」 「君は、サモン・サーヴァントによって、ここに呼び出されたのだよ」 「サモン・サーヴァントだと?」 「ゲートを通して対象を召喚する魔法なのだが…心当たりは無いかね?」 「…あの鏡のようなやつか?」 「恐らくそれだろう。それで、さっきの質問なのだが」 「私がかつて属していた組織は東の地にあるが…本当に知らないのか?『クレイモア』という存在を」 「東…君はあのロバ・アル・カイリエから来たのか!?東の地ではエルフの事を『クレイモア』と言うのか…興味深いな」 「私が居た所は47の地区に分けられた大陸で、一地区に一人戦士が担当しているのだが…トリステインなどという地名は聞いた事が無い」 「大陸…別の大陸という事か。面白い…実に面白い!」 ちょっとテンションが上がってきたコルベールと呼ばれた教師だが、ルイズは放置食らっている。 「一つ聞くが、この地に『妖魔』は居るのか?」 「『ようま』…どういったものなんだね?」 「簡単に言えば、人の臓物を好んで喰らう化物だ」 「オーク鬼みたいなものかね…?」 オーク鬼の説明を受けるが、全然妖魔とは違う。 他にもいくつか候補が挙げられるが、全て今まで相手をしてきた妖魔とは異なるものだった。 今度は妖魔の説明をしたが、そんなタイプの怪物は居ないと言われる始末。 「いや、驚いた…。そんな化物が存在するとは、君がいた場所は随分と物騒なんだね」 「驚いたのはこっちも同じだ。ドラゴンなどがいるなど到底信じられん」 覚醒者なら、そんな形をした者も居るかもしれないと思ったのだが、話を聞く限り種族として存在する以上、それは覚醒者ではない。 話を纏めると『妖魔はこの地に存在しない』『故に組織の力もこの地には及んでいない』『ただし、妖魔の代わりに妙な化物が多数存在する』 という事になったが、今のイレーネには好都合だ。 再生できた理由は分からないが、常人程度の力しか持たないこの右腕では最下位Noの戦士すら倒せない。 もちろん、再生能力や妖力解放は通常と同じよう備わっているし、脚はその力を失っていない。 まぁ、『クレイモア』と呼ばれた自分が剣を用いず足技で格闘戦をしている姿は、あまり想像できなかったが。 そこら辺の人間ならそれで十分すぎる程の戦力になるだろうが、戦士を相手にするとなるとそれだけでは無理だ。 まして、元No2である自分に差し向けられてくる者なら、上位ナンバーである事は確実なのだ。 そういう事から、組織の力がこの地に及んでいないという事は、非常に有難かった。 もちろん、万が一に備えて無駄な妖力解放はしない方が良い。 組織に探知されても厄介だし、もし覚醒でもすれば、組織の力が及んでいない地域だけあって、国の一つや二つを滅ぼしかねない。 そういった観点から、妖力を使うとしても一割程度に抑えておいた方がいいと決めた。 高速剣に関しては妖力を腕のみに止める技なので、覚醒への影響は少ないだろうが どのみちこの腕では持続力はともかく、力と剣速は右腕を託す前のクレアにも及ばない使い物にならない高速剣しかできないだろうから、使う必要は無い。 場所のに関する状況は概ね理解できたので、本題の召喚された理由を問う事にする。 「それはいいとして、私をサモン・サーヴァントとやらで召喚したのは何故だ?」 「その…言いにくいのだが、君は使い魔として呼び出されたのだよ」 「使い魔だと?」 「使い魔というのは契約を行い主人に仕える存在で、 本来なら幻獣や動物を呼び出すものなのだが…エルフが召喚されたのは今回が初めてだ」 「組織に属しているという事とあまり変わらんな」 とうの昔に離反しているのだが、早い話、主従になれという事かと認識した。 一線から退き、託すものは全てクレアに託した身ではあるが、 生きていてくれと言われた手前、そう簡単に死ぬつもりは無い。 プリシラを狩るという事が、どれだけ気の遠くなるような事かは身を持って知っている。 例え順調に事が運んだとしても、1~2年では済まないはずだ。 どのみち、今の妖気が漏れ出ている状態で組織の手の届く地に戻れば、一発で捕捉されてしまうだろう。 放置されているルイズと目が合ったが、テレサと同じような事をしてみるのも悪くないと思った。 もっとも、ちびクレアとルイズとでは年齢が大分違うのだが。 「まだ名前を聞いていなかったな」 「ルイズ…ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」 「私の名はイレーネ。いいだろう、ルイズ。お前の使い魔とやらになってやるよ」 声にこそ出さなかったが、ルイズは内心、天高く拳を突き上げ「キターーーーーー!!!!!!!」と叫んでいた。 何せ、エルフである。先住魔法を行使し、並のメイジ10人分の力を誇るとまで言われているあの種族が使い魔になると言ってきたのだ。 気が変わらないうちにと、早速コントラクト・サーヴァントにとりかかる。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 先程と同じ呪文を唱えるが、打って変わって声の調子はものっそい嬉しそうである。 (やれやれ…これが契約か) それが終わると、イレーネの体…特に左肩が熱くなった。 「…ッ」 普段から妖魔や覚醒者に相対している身であるから、この程度の熱さ等どうという事は無い。 「コントラクト・サーヴァントは無事にできたね。どれ、ルーンの確認をさせてもらうよ」 だが、イレーネが肩のマントを捲ると二人が固まった。 それもそのはず。左腕が存在していないのだから。 「珍しいルーンだが…その、左腕はどうしたのだね?」 そう聞かれた瞬間、イレーネの顔が曇る。 さすがに、まだあの時の圧倒的な恐怖は頭からこびりついて離れていない。 ルイズも、少しばかり契約した事を不安に思った。 腕が一つ足りない使い魔ってどうよ?と 「まあ、聞かれたくない事もあるのだろう。私は先に教室に戻っているよ。皆も既に戻っているようだしね」 そう言うと、コルベールが空を飛び学園へと帰っていく。 「見事なものだな…ところで、お前は飛ばないのか?」 仮にも契約したのにお前呼ばわりされた事に怒ろうとしたが止めた。やっぱりあの目は怖い。 「う、うるさいわよ…!ほら、早く着いて来て」 深く追求せずに後を追いつつ、テレサが連れていたちびクレアとは大分違うタイプだな… 等と思いながら空を見上げた。 何かこう、普段見ているものとは一つ余計な物が見えた。 「…ったく、また分からんものが一つ増えたな…」 まだ夜にはなっていないが、薄っすらと月が二つデカデカと浮かんでいる光景がその銀眼に映った。
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岡本真也(12) 岡本 真也(おかもと しんや、1974年10月21日 - )はセントラルリーグの中日ドラゴンズに所属するプロ野球選手。ポジションは投手。背番号12番。 略歴 * 身長・体重 1m83cm、90kg * 投打 右/右 * 出身地 京都府 * 血液型 A * 球歴・入団経緯 峰山高 - 佐藤工務店 - 阿部企業 - ヤオハンジャパン - アムウェイレッドソックス - ヤマハ - 中日ドラゴンズ(2001年 - ) * プロ入り年度・ドラフト順位 2000年(ドラフト4位) 通算成績(2006年シーズン終了時) * 282試合 31勝15敗3セーブ 374奪三振 防御率3.24 タイトル・表彰 * 最優秀中継ぎ投手 2004年 引用元Wikipedia
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前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第六十九話「あっ!ドラゴンもグリフォンも氷になった!!」 ミニ宇宙人ポール星人 隕石小珍獣ミーニン 凍結怪獣ガンダー 冷凍怪獣マーゴドン 登場 才人がふと目を開けると……自分が燃え盛る炎の中にいるのが分かった。 『な、何だこれ!? 俺は一体どうしたんだ……!』 仰天するものの、炎に囲まれているにも関わらず全く熱さを感じず、火傷もないことを すぐに把握した。しかも、自分の姿はグネグネと揺れ動いている。 『これは何事なんだ……?』 『地球人、ヒラガサイト! 聞こえているかね?』 戸惑う才人の目の前に、謎の三人の宇宙人のシルエットが現れる。手の平の上に乗ってしまいそうなほどに 異様に小さな体躯で、三角形状の頭部に直接手足が生えているような、見るからの異形だ。 才人はすぐに問う。 『お前たちは誰だ!』 『我々はポール星人! 過去に二度ばかり地球を氷詰めにしてやったことがある』 ポール星人。それはかつてウルトラ警備隊が冷凍怪獣ガンダーによって絶体絶命の危機に陥った際に、 隊員の一人が幻覚の中で目にしたという、ガンダーの黒幕の宇宙人だ。地球の氷河期は、このポール星人が 引き起こしたものだと彼らは語った。しかしその隊員が幻覚でしか目撃しておらず、実在の証拠が一つも ないので、その存在は大半の人間から疑われている。才人も噂でしか名前を聞いたことがなかった。 『お前たちも侵略が目的か!』 才人が問い詰めると、ポール星人は高笑いを発した。 『ハッハッハッ! そんな低俗なことに興味はない。我々の目的は、人間への挑戦! 我々はこの ハルケギニアに氷河時代を迎えさせる!』 『何だって!?』 『ハルケギニア上の生きとし生けるものが、全て氷の中に閉じ込められてしまうのだ! もちろん、お前さんも一緒だ! 寒い思いをするがいい!』 『そんなこと、ウルティメイトフォースゼロが許すものか!』 と告げる才人だが、ポール星人はまるで意に介さなかった。 『そんな奴らは、我々の敵ではない。言っただろう、我々は人間に挑戦するのだと!』 『どういうことだ!?』 『我々はかつて地球に三度目の氷河期をもたらそうとした。作戦は完璧だった! しかし我々は負けた。 ウルトラ戦士にではない。地球人の忍耐! 人間の持つ使命感に負けたのだ! だから、今度は人間に リベンジする! そう、地球人のヒラガサイト、君にだ!』 『な、何だって……!?』 唖然とする才人。自分が地球人の代表として、宇宙人と戦うのか。そんなことが出来るのか。 『我々の作戦は最早止めることは出来ない。ハルケギニアを氷の星にしたくなければ、我々の仕掛ける 勝負に勝ってみせることだな、ハッハッハッハッ……!』 そう言い残したポール星人の声がだんだんと遠ざかっていく。 『ま、待て! そんな勝手なことは……!』 許さない、と言いかけた才人だったが、それを言い放つだけの自信が今の彼にはなかった。 やがて炎の光景が薄れていき……。 「おいサイト! 起きやがれ! 朝だぜぇッ!」 グレンの大音量の呼び声によって、才人は目を開いた。 辺りを見回して状況を把握する。昨晩と同じ部屋の景色、同じベッド。どうやら先ほどまでのことは、 夢の中の出来事だったみたいだ。 「さぁ、シャキッとしな! 今日からお前の特訓を始めるぜ! すぐに支度するんだな! 朝食を忘れるなよ! 腹ペコのままじゃ力が出ねぇぞ!」 と言われて、才人は昨日決定したことを思い出した。今日から、グレンに鍛錬をつけてもらうことに なったのだった。とはいえ……。 「まだ外暗いじゃんかよ……」 「なーに言ってやがる! 特訓ってのは早起きしてやるもんだ!」 才人の反論はばっさりと切って捨て、グレンは彼を引っ張り出すように外へ連れていった。 「よぉし、まずは身体を動かすぜ。最初は腕立て百回からだ!」 グレンが何のためらいもなくそう言うので、才人は思わず目を見張った。 「いきなり百回!? そんな、俺始めたばっかりなんだから、もうちょっとお手柔らかに……」 「寝ぼけたこと言ってんじゃねぇっての! 苦しくなきゃ訓練じゃねぇよ!」 しかし才人の言い分が超熱血のグレンに通るはずもなく、否応なくやらされる羽目になった。 腕立て百回の後は腹筋や背筋、グレンに延々叱咤されての走り込みなど……。とにかく基礎訓練を みっちりとやらされた。朝早くから始めたにも関わらず、終わる頃には日が頭の天辺まで昇っていた。 さすがにへばる才人だが、グレンの熱血っぷりはそれで留まらなかった。 「サイト! へたれてる暇はねぇぞ! こんなのは準備運動だ! ここからが本番よ!」 「えぇ!?」 「本番は実戦形式の手合わせだぜ! さぁ、どこからでも掛かってこいや!」 自分に殴りかかってくるよう手招きするグレン。さすがに待ったをかける才人。 「ち、ちょっと! 素振りとか、技の稽古とかないの!? まだ戦い方を全然習ってないんだけど……! それに俺はこれでも剣士だから、素手の戦いを習っても……」 するとグレンはこう返答する。 「実戦で使える技ってぇのはな、戦いの中で身につくもんだ! それに戦いの基本は格闘だぜ! 剣も格闘が出来るようになってから様になるってもんよ!」 「ほんとかよ……」 「ほんとだっつぅの! 俺たちいつも殴り合いで訓練してるからな! 分かったらとっとと来な!」 とにもかくにも、手合わせをしなくてはいけないみたいだ。とんでもない人を先生にしてしまったと、 才人は若干後悔した。 それでもグレンに遮二無二殴りかかっていくが……拳を突き出す前に殴り返されて転倒した。 「そっちから手を出してくるのかよ!」 「あったり前だろぉ!? 殴られるのを待ってる奴なんかいるかよ! さぁ、一発やられただけで 寝転んでんじゃねぇぜ! これがホントの戦いだったらお前は死んでるぞ! とっとと立ち上がって もう一度掛かってこいやぁ!」 「くっそぉぉぉ……こうなりゃとことんやってやるぜッ!」 才人は半ば自棄になり、グレンに挑んでいってはあしらわれるを繰り返す羽目になった。 ぶつかり稽古の中で、グレンから様々な指摘をされる。 「駄目だ駄目だ、そんなへっぴり腰じゃ! 男はもっとどっしりと構えるもんだ! 腰から拳に力を乗せろッ!」 「俺の腕の動きだけを見るんじゃねぇ! 相手の全身を見るんだ! そうすりゃ敵の動きも見えてくる!」 「動きが見えたら、それに合わせて自分も動くようにするんだ! 一つの戦い方だけじゃ 到底やってけねぇぜ! やり方? そういうのは教わるんじゃなくて自分で感じ取るもんだぜぇッ!」 グレンのしごきは本当に辛く苦しいもので、才人はどんどんとフラフラになっていく。 「はぁ、はぁ……薄々分かってたけど、本当に無茶させるな……」 「こんなのゼロのしごきに比べりゃ遊びみたいなもんだぜ? あいつ人と手首をつないだ状態で 崖登りさせたりとかするからな!」 「えっマジ!?」 ゼロの意外な一面を知ったりしながらも、才人は殴り合いの中で次第に戦い方というものを その身に吸収していった。 また、グレンは稽古の最中に、戦いに重要なことも教えてくれた。 「いいか、戦いで大事なのはいくつかあるが、一番は勢いだぜ! どんな奴が敵だろうと、 勢いのある方が戦いで勝つッ!」 「ほ、本当なのか……?」 「マジだぜ! 戦いには流れってもんが確かにあるのよ。その流れを掴んで勢いを出せれば、 多少強引にでも相手をねじ伏せられる! 逆にどんな力を持ってようと、勢いがない奴は 相手に押されちまう! どんな時も勢いを止めないことを忘れるなッ!」 手合わせという名の殴り合いは、小休止を挟みながらも夜遅くまで続いた。日が完全に 暮れた頃になって初めて才人は解放された。 「よぉし、今日はここまでにしようか。夜はしっかりと休んで体力を戻すんだぜ。明日も 朝早くから始めるからな!」 「あ、ありがとうございましたぁ……」 すっかりグロッキーの才人だが、礼を言うことだけはどうにか出来た。 汗だくの才人に、タオルが差し出された。 「使って」 タオルを持っているのはティファニアだった。上半身裸の才人を見るのが恥ずかしいのか、 頬を染めて横を向いている。 「ありがとう」 タオルを受け取って身体を拭く才人に、ティファニアが話しかける。 「特訓をしてるところ、何度か見学したけど……あの人、ほんとに厳しいのね。ああいうのを、 鬼教官って言うのかしら」 「そうだね。でも、お陰で自分がすごい早さで強くなってるような気がするよ。そこは感謝しなきゃな」 と語る才人の顔をまじまじと見つめるティファニア。 「どうしたの?」 「サイト……どうしてそんなに頑張れるの? あの人の課す特訓、いくら何でも無茶苦茶だわ。 一日中殴り合いさせるなんて……。わたしにはとても無理。いいえ、大の男の人でも根を上げる くらいだと思う。それなのに、あなたのどこからそんな力が湧いてくるの?」 その質問に、才人はしばし考えた後、次のように答えた。 「尊敬する仲間の頑張るところを、ずっと近くで見てたからかな……」 「仲間?」 「ああ。今は……側にはいないんだけどな、俺にはとても頼れる仲間がいるんだ。その人は、 どんな絶望的な逆境に置かれても、絶対に諦めることはなかった。そして懸命に戦い続けることで、 何度も奇跡の逆転を掴み取ってた。その後ろ姿を見てて、あの人みたいになりたいと心の底から 思ってるから……俺も、頑張らなきゃって思いが湧いて出てくるんだよ」 そう語る才人を、ティファニアは感銘を覚えたように見つめる。 「あなたって、偉いのね」 「こんなの、偉くなんてねえよ。単なる憧れさ」 「その思いでどんなに苦しくても頑張れてるじゃない。偉いわ。わたしね……」 ティファニアは、言葉を選ぶように、ゆっくりと言った。 「わたし、何かを一生懸命に頑張ったことってなかった。やりたいことはいっぱいあるはずなのに、 ただぼんやりと災いのない場所で暮らしてただけ」 「いいんじゃないの。大変だったんだから」 「ううん。それはなんか、逃げてるって気がする」 ティファニアは才人の手を握った。 「ありがとうサイト。わたし、もっといろんなものが見てみたくなった。昔住んでたお屋敷と……、 この村のことしか知らないから、まずは世界を見てみたい。世界って、いやなことばかりじゃない。 楽しいことも、素敵なこともきっとあるんじゃないかって……。あなたを見てたら、そう思うようになったわ」 才人は顔を赤らめた。 「ねえ、お友だちになってくれる? わたしのはじめての……、お友だち」 「いいよ」 「あなたが村を出るときには、記憶を消そうと思っていたけど……、消さない。お友だちにはずっと 覚えておいて欲しいもの」 「そっか」 二人は友情の誓いを結び合い、夕食を取ることにした。しかしその寸前、ふと才人は頭をひねる。 「そういえば……何かを忘れてるような気が……」 グレンの非常に厳しい訓練の中で、才人の頭からは今朝見た夢の内容がすっかりと飛んでしまっていた。 才人の特訓は三日間、ひたすら殴り合う形で続いた。才人にとっては地獄の責め苦が生ぬるく 思えるような過酷な時間であったが、グレンがつきっきりで指導し続けてくれたことで、 たった三日の中でめきめきと力をつけていった。 そして特訓の中で、グレンは才人にこんなことを聞いていた。 「なぁサイト、お前俺の旅についてきたいって言ったけど、ルイズの嬢ちゃんのところに 戻るつもりはほんとにないのか?」 「え?」 聞かれた才人は、ややうつむきながら肯定する。 「ああ……。俺はもうあいつの使い魔じゃないし、ゼロに変身も出来ないしな……。たとえどんなに 鍛えたところで、巨大怪獣や宇宙人はもちろん、ただの人間じゃメイジにもてんで敵わないだろ」 才人はそう思っていた。ギーシュ並みの素人ならともかく、ワルドのような本職の戦士のメイジには、 魔法という大きな武器が相手にある以上は、ルイズを守りながら戦うなんて無理だ。 「ルイズに敵が多い以上、あいつの足を引っ張る訳にはいかないんだよ……」 と言うと、グレンは真顔でこう告げてきた。 「そいつは違うだろ」 「え……?」 「力がどうとか、そういうことじゃねぇ。要はお前がどうしたいかっていう気持ちの問題だろうが。 お前、ほんとにこのまんまルイズに会わず終いでいいのか? きっと後悔すると思うぜ」 「そんな、気持ちがあったところで……」 「いいや、物事の一番大事なもんは、他ならぬ気持ちだぜ。どんな力があろうと、何の気持ちも ない奴には何にも始められねぇし、何にも成し遂げられねぇ。力がないから出来ねぇっていうのは、 どんなに言い繕っても甘えの言い訳だって俺は思うな」 「……」 「強い気持ちがありゃあ、何だってやれるはずだぜ」 そう説得された才人は、自分の本当にしたいことを考え直した。 しかし、その時には答えは出てこなかった。 そして四日目の朝……事件は起こった。 「は……はっくしょんッ! うぅ、寒ッ!」 今日も今日とて朝早くから特訓に励もうとした才人とグレンだったが、今日ばかりはそれは出来なかった。 何故なら、家の外に猛吹雪が吹き荒れているからだ。 「テファお姉ちゃん……寒い……」 「キュウ……」 「みんな、しっかり……!」 部屋にはウエストウッド村中の子供たちが集まっていた。ミーニンを中心におしくらまんじゅうのように 固まり、ありったけの毛布にくるまって暖を取ろうとしている。しかしそこまでやっても、子供には 耐えがたいほどの寒波が襲っているのだ。 「くっそぅ、どれだけ薪をくべても全然足りねぇぜ!」 グレンが暖炉に薪を放り続けて火力を強めているが、それでも寒さを追いやることは出来ない。 それどころか、家自体が吹雪の前に吹き飛んでしまいそうであった。天井がミシミシ音を立てる毎に、 子供たちが怯える。 「おかしいわ……いくら冬だからって、この時期にこんな大きな吹雪が発生するなんて……」 「そうか。異常気象って奴だな……」 ティファニアのひと言に、才人が深刻な顔でつぶやいた。雪山でも吹雪に遭遇したが、 今外で起きているこれは、それを上回るほどの異常な規模であった。 グレンも才人の意見に同意する。 「こいつはただごとじゃねぇぜ……昨日までは荒天の気配なんて全然なかったのに、こんなことに なるなんざ。何か原因があると思うな」 「でも原因ったって、外は真っ暗で何も見えないし……。デルフ、何か見えないか?」 「無茶言うなよ。伝説の剣たって、透視が出来る訳じゃねえんだ」 グレン、才人、デルフリンガーは窓から外を眺めるが、太陽の光は完全に閉ざされているので、 全く遠くが見通せない。しかし、 「……いや待った。今何か、変な音が聞こえなかったか?」 「確かに、風の音に紛れて何かが聞こえた気がするな。何かの動物のうなり声みてぇな……」 デルフリンガーの問いかけに、グレンが重々しい表情でうなずいた。 すると彼らの会話に合わせたかのように、吹雪が弱まって視界が開けていく。……いや、 この急激な天候の変化は不自然だ。まるで、「意図的に視界を開けている」ような……。 「プップロオオオオオオ!」 そして明らかに風と雪の音ではない音が、才人やティファニアたちの耳にもはっきりと届いた。 鳥とも、獣ともつかない異様な鳴き声だ。 「わああああッ!」 「お姉ちゃん、怖いッ!」 子供たちはますます怖がり、ティファニアが懸命に慰めている。 一方で窓の外の景色を覗く才人たちの目に、アルビオンの大地を覆い尽くした雪原の上に、 巨大生物がそそり立っている光景が飛び込んできた。 「プップロオオオオオオ!」 「あ、あいつは!!」 驚愕する才人。雪原の大怪獣……カタツムリのように突き出た目玉、たらこのような唇、 逆三角形状の翼、ドリル状の指を持ったその容姿は、凍結怪獣ガンダーのものであった。 ガンダーには吹雪を起こす能力がある。この異常気象の原因は、奴に相違ないだろう。 そしてガンダーといえば、あのポール星人と同時に現れ、ポール星人が操っていたという怪獣。 ということは、あの夢はただの夢ではなかったのだ! これはポール星人による、才人への挑戦なのだ! 「プップロオオオオオオ!」 荒れ狂う吹雪の中に仁王立ちするガンダーの姿を、各国の竜騎士、魔法騎士で構成された 混成部隊も確認していた。折しも今は戦争後の調停を執り行う諸国会議の最中。しかし突然 アルビオン全土を覆う規模の異常な猛吹雪が発生したので、急遽原因を究明する調査団が 結成されたのだった。 「やはり怪獣の仕業だったか……。ハルケギニア諸国の王が一堂に会されたこの時期に、 これ以上の狼藉は許さんぞ!」 トリステインの部隊の隊長が早速、部下たちに攻撃の合図を出した。自分たちだけの力で 怪獣を倒すことで、会議でも有利になろうという魂胆も含まれた決断だった。幸い、万一の時に 備えて対怪獣用兵器を用意してきている。 「如何にも火に弱そうじゃないか。この特製火石をお見舞いしてやる!」 グリフォンに跨った騎士二名が、改造ベムスターにも使用した巨大火石を運んできた。 それをガンダーの頭部に落として炸裂させ、一気に仕留める算段だ。 しかしその時、騎士たちに向けて一層強烈な冷気が襲いかかってきた! 騎士たちがみるみる内に 凍りついていく。 「ぐわぁぁぁぁッ!? な、何事だ!?」 ガンダーの反撃か。いや、それは違う。ガンダーはそっぽを向いているではないか。それに冷気は 別方向から飛んできている。 慌てて振り返った騎士たちは、冷気を放出している犯人の姿を目撃した。 「ガオオオオオオオオ!」 真っ白い毛で全身を覆った、翼の生えたマンモスのような怪獣。それは恐るべき大怪獣マーゴドンであった! 冷凍怪獣の中では最大級の能力の高さを誇り、いくつもの惑星を氷に閉ざして生物を死滅させた、まさしく 悪魔の如き怪獣なのだ! 「ほ、他にも怪獣がいたのか!」 マーゴドンは全身から冷気を噴出している。その冷気が騎士たちを纏めて窮地に追いやる! 「ぐわああああぁぁぁぁぁッ! こ、このままでは全滅だ! 奴に火石を食らわせろぉ!」 隊長が苦しみながらも指示を出したが、それは叶わなかった。 「だ、駄目です! 火石まで凍りついて、起爆できませんッ!」 「そ、そんな馬鹿な!? わあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」 猛烈な冷凍ガスを前にして、騎士たちは抗うことすら出来ずに凍結していく。騎士だけではない。 ドラゴンも、グリフォンもたちまちの内に凍りつき、雪に覆われた大地に向けて真っ逆さまに転落していった。 ハルケギニア各国の精鋭部隊が、たった一瞬の内に全滅してしまったのだった。 恐るべきポール星人の挑戦! ガンダーの、マーゴドンの冷たき脅威! アルビオンは、 いやハルケギニアそのものが、氷河期の危機に見舞われたのだ! 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
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前ページ次ページゼロの使い魔・ブルー編 「もう半日以上経っているぞ?魔法衛士隊の連中は化け物か」 「グリフォンと馬では勝手が違うのかも知れませんね……」 「そういうものかね」 「知りませんよ……」 「……大丈夫かね?」 ギーシュが言ったとおり、半日ほど馬に乗りっぱなしである二人であった。 元々乗馬の経験があるギーシュはまだ何とか体勢を保っていたが、 ルージュはと言うと、完全に馬の上でぐったりしている。 ギーシュはそんな様子を見て、不思議そうに言った。 「君はもっと体力がある方だと思ったがね」 「……何でです?」 「ちょっと剣を振ってみたんだがね、あれは結構疲れた」 「……そうですか」 「……本気で疲れてるようだね……」 そこに、ワルドの怒鳴り声が聞こえた。 「早くしないと、置いていくぞ!」 ……彼にしては珍しく、少し苛ついた。 「……『デュレイオーダー』」 グリフォンの速度を、少しずつ下げていった。 そのうち、ろくに操れていない馬の方が早くなる。 ルージュは追い越して、距離がある程度経つと息切れしながら、 何とか出せる限りの大きな声を出した。 「早くしないと……置いてきますよ……」 そのまま走り去る。 まぁ、『デュレイオーダー』は時間が経てば解けるし、 グリフォンの元の速度が馬より速いから、さして問題ではないのだが。 事実、その後ルージュの馬はワルドのグリフォンにあっさり抜き返された。 まぁ、そんな事をしていたので、馬を乗り換えながらも、 夜深くにようやくアルビオンの玄関口たるラ・ロシェールについたのだが。 「ゼェ……ハァ……」 「本気で辛そうだね……君は……」 「まだですか……」 「それはもうかれこれ12回聞いた気がするんだが…… だけど、もうすぐ着くよ」 その言葉にルージュは顔を上げて周りを見回した。 港町と聞いていたが、山だらけである。 「……シップがないのに、高地に港町があるんですか?」 「シップ?なんだねそれは」 「……船です」 「別におかしく無いじゃないか」 「……?」 その時、彼らめがけて崖上から火のついたたいまつが投げ込まれる。 馬がそれに驚き、暴れ出した馬にギーシュとルージュは捕まっていられなかった。 その後数本の矢が飛んでくると、ギーシュが叫ぶ。 「奇襲だ!」 「……」 「ブルー!寝てないで応戦したまえ」 「もう止めてくださいギーシュ……僕のLPはもうゼロです」 「ゼロになったら死ぬんじゃないのかね」 「宿屋に行けば大丈夫です……というわけで後は任せました……」 「いや、そういうわけに――」 矢が横をかすめて飛んできたので、ギーシュは黙り込む。 「むう、どうも一人でなんとかしなきゃならないみたいだね……」 ギーシュはそう言って矢の飛んでくる方向に大体の当たりを付け、 錬金で壁を作り出し、そこに隠れた。 「さて、近づいてきてくれれば僕でもどうにか出来るかも知れんが、 このままもう一回たいまつを投げ込まれたらどうしようか」 と、そこにワルドが戻ってくる。 飛んできた矢を、竜巻を作り出してはじき返した。 「子爵!」 「野党か山賊の類か?」 横で呆然としていたルイズが、続く。 「アルビオンの貴族派ってことは……」 「貴族ならあんな手は使わん」 その言葉に、寝ていたルージュは少しの違和感を感じた。 (そう言えば、今朝方も変だったな。 なんであの紹介でルイズの使い魔だと解ったんだ?) あの説明ならば、ギーシュと『その』使い魔のブルー、と捉えてもおかしくはない。 だが、それは個人の捉え方。どう解釈してもおかしくはない。 しかし。 (貴族派、と言ってもまさか全員が貴族というわけじゃないだろうし) そして思考をより深くしようとして、 どこからか聞こえてきた翼の音に、思考を中断させる。 崖の上から悲鳴が聞こえてくる。恐らく、たいまつや矢を飛ばしてきた者達だろう。 暗くて遠くなので良く見えないが、数回雷光が閃くと、その男達の姿が見えた。 「『風』の呪文……にしては妙だな」 雷撃に撃たれた男達ががけの上から転がってくる。 崖の上に何かが降り立つと、月からの逆光でシルエットが浮かび上がる。 「あれって……」 それは再び飛び上がると、此方に向かって飛翔してきた。 近づいてくると、その姿と、上に乗った二人組が見える。 「タバサ!クーン!後キュルケ」 「なんであたしはついでなのかしら?」 「何しに来たのよ!?」 「追ってきたのよ。思ったより時間がかかったけどね」 キュルケは雷竜の背中から飛び降りると、 転げ落ちていた男達を足で軽くこづく。 「で、こいつらどうするのよ?」 「僕に任せてくれたまえ」 と、ギーシュが一歩前に進み出る。 「君たちは何だね」 「ただの盗賊だよ」 ギーシュが振り返る。 「だそうだ」 「……いや、色々と突っ込むところが多すぎて逆に……」 「やるなら徹底的に」 といい、今度はタバサが前に進み出る。 「なんだ、今度は嬢ちゃんか、俺達はただの盗賊だって――」 返事はせず、タバサは小さく呟き、杖を振る。 幾つかの氷の矢が、自称盗賊達をかすめて地面に突き刺さる。 「……わ、解った。酒場で酒を飲んでたら、男と女の二人組に雇われたんだ」 「詳しく」 「女の方はフードを被ってたからよく解らねえ。 男の方は仮面を被っててよくわからなかったが、そうだな……身長はそこの兄ちゃんぐらいだな」 と、ワルドの方を見やって言う。 「それと、二人ともメイジだったな」 「それだけ解ればいい」 タバサが振り返る。 それに対し、ワルドが言う。 「……ふむ。捕縛したい所だが、時間がない。 ここは放置して先を急ぐとしよう」 と、ルイズを連れてグリフォンにまたがる。 ギーシュとルージュも馬に乗った。 彼らが進むその先に、ラ・ロシェールの灯が煌めいていた。 彼らが去った後。 「畜生、割の良い仕事だと思ったら、相手がメイジなんて聞いてねえぞ!」 「あんな人数のメイジを相手なんて、金貨200でも足りねえよ……」 と、そこに白い仮面を付けた男が現れる。 男達のうち一人はそれに気付くと、ぶっきらぼうな口調で言う。 「おい、いくら何でもメイジ相手は無茶ってもんだろう、旦那よ」 「そうか、だがまだ働いて貰うぞ」 「あぁ?俺達は今さっきガキのメイジ一人にあしらわれたんだぞ? こんな仕事やってられるか!降りるぞ!」 「そうか」 冷たく言うと、男は腰に下げた紅い剣を抜きはなった。 「な、何だ、やろうってのか?」 「逃げれば殺すと言っただろう」 「へ、へへ。剣を使うって事はてめぇメイジじゃねぇな。 この人数相手に勝てると思うのか!?」 と、周囲に寝転がっていた男達が立ち上がり、各々の獲物を手に取る。 「そうだ、てめえから金を奪えば良いじゃねえか。 まさかあれだけって筈もないだろ……やっちまえ!」 男達が、仮面の男に武器を構えて駆ける。 仮面の男はそれを平然と眺めて、手にある剣を一閃した。 剣がふくれあがった。そう表現するのが一番正しい。 紅く透き通った巨大な刀身が仮面の男を中心に振り回されると、 男達が身体を真横に両断される。 「……な、なにが…………は」 胸の辺りを切断された男は、最後の吐息を漏らすと、 それ以上話す事は出来なかった。 仮面の男が、その場を立ち去る。 後には、骸だけが残った。 『女神の杵』亭という、結構豪華な宿に泊まる事になった一行は、ぐったりしていた。 いや、どちらかというとルージュのみがぐったりとしていた。 ギーシュは、ワインを飲んでくつろいでいる。 キュルケはタバサに話しかけている。タバサは本を読んでいる。 つまり会話が成り立っていない形になる。 ルイズはと言うと、ワルドと共に『桟橋』に乗船の交渉に行っている。 ルージュが机に寝そべったまま、ギーシュの方を向き、聞いた。 「ギーシュ、さっき船がどうとか言ってたよね?」 ギーシュは、口に含んでいたワインを飲み込む。 「確かに言ったね」 「高地にあるって事は……まさか飛んだりはしない?」 「飛ぶに決まってるじゃないか。アルビオンに行くのだから」 と、そこでルイズとワルドが帰って来た。 一同が集まっていた卓の空いている席に座る。 「アルビオンへの船は明後日にならないと出せないそうだよ」 「一刻を争うのに……」 「良いじゃないですか、無理に急いだって良いことはありませんよ」 ルージュが言うが、その様子を見てると誰もが同じ感想を抱く。 休みたいだけじゃないのか?そんな視線に晒されても彼は動じない。 キュルケがそこで話題を変える。 「アルビオンに行ったことはないからわかんないけど、 明日は船が出せないの?」 「明日は月が重なるだろう?その翌日に、アルビオンが最もラ・ロシェールに近づくのだ」 そして、三つの鍵を机の上に置いた。 「今日はもう休もう、部屋をとっ……ってあれ?」 鍵がいつの間にか二つになっている。 見ると、ルージュが既に部屋のある上への階段を上っていた。 ワルドはそちらを見てから、もう一度卓についている者の方を向く。 「……キュルケとタバサ、彼とギーシュ、僕とルイズが相部屋だ」 前ページ次ページゼロの使い魔・ブルー編
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授業が始まる。やっぱりミキタカいないし。あいつ自由すぎ。 モンモランシーとギーシュもいないみたいね。どこでいちゃついてるのかしら。うらやまいやらしいわね。 「皆さん。春の使い魔召喚は大成功のようですね」 それは意見の分かれるところだと思いますシュヴルーズ先生。 「おやおや変わった使い魔を召喚したものですね、ええと……」 顔を伏せる生徒複数名。変わった使い魔だらけでシュヴルーズ先生がいじる相手に困ってる。 何あの蛙みたいなの。マリコルヌの? ちっさ。しょぼっ。後で笑ってやるの決定ね。 キュルケ誇らしげだけどあんたなんか実質呼んでないのと一緒じゃない。偉そうに胸張って。わたしに分けるか触らせるかしなさいよ。 むっ、眼鏡の横に浮かんでるちっちゃなドラゴンがこっち見てる。喧嘩売ってるのかしら。睨み返しておこうっと。 「あれあれ、台車で運ばれてるやつ。あの岩に埋め込まれた人間みたいなのは何?」 「岩に埋め込まれた人間なんじゃないの」 「そこでうごめいてる緑色のバラバラ死体は何?」 「緑色のバラバラ死体に見えるわね」 「なんだ。ルイチュってばなんにも知らないのね」 くっ。屈辱。皆してわけ分かんないモンばっかり召喚しないでほしいわ。グェスがまともに見えてくる。 「今から皆さんには土の系統の基本である『錬金』を覚えてもらいます」 シュヴルーズ先生がルーンを唱え、杖を振るう。ただの石ころがピカピカ光る真鍮に変化した。 「ゴ、ゴ、ゴ、ゴールドじゃない! ゴールド! ゴールド!」 どこの馬鹿かしらねうるさいったらないわと思ったらうちの馬鹿だった。 「グェスちょっと静かになさい」 「だってゴールドじゃないゴールド! あのババァ金作った!」 「ババァが作ったのは金じゃなくて真鍮! そんなに驚くようなことしてないの!」 「ミス・ヴァリエール! 授業中の私語は慎みなさい!」 怒られた。グェスのせいだ。 「おしゃべりをする暇があるのなら……」 シュヴルーズ先生とわたしの視線が交錯した。先生が一つ頷き、わたしが二つ頷き返す。 「それではミスタ・マリコルヌ。ここにある石ころを、望む金属に変えてごらんなさい」 台詞の前半と後半でつながりが悪いと感じた人も多かっただろう。 指名されたマリコルヌをはじめとして、皆が腑に落ちない顔をしている。 それでも文句を言わないのは、わたしが呪文を使えば何がどうなるか知っているから。 今年初めて担当になったシュヴルーズ先生も知ってるところを見ると、かなり有名になってるみたいね。 気のせいかわたしの見せ場を一つ無くしてしまったような……気のせいだといいんだけど。 「ゼロのルイチュだから気ぃ遣ってくれたのね。あのババァ、けっこういいやつじゃん」 「……今度ゼロって言ったら食事抜きだからね」 グェスに言われるまでもなくガックリきたけど、わたしは知らなかった。 今日という日はまだまだ終わらない。災厄がてぐすね引いて待っている。助けて。 昼食。授業に出ていなかったくせして堂々と座ってるミキタカ。だから自由すぎ。 「ルイズさん。自分の中にいる別の存在を感じたことはありませんか。その影響を受けたことは?」 ああ。こいつってちょっとした歓談の話題もこういうものしかないのね。次からは手招きされても遠くに座ろう。 「本来の自分にないはずの傾向はありませんか。ちょっとした趣味嗜好、なんでもかまいません」 ぺティはニコニコ顔でご主人様を見ている。この主人にして使い魔あり。 「外に出ないよう隠しているものはありませんか」 あったって言えるわけないでしょ。 わたしはね、生まれてこのかたずっとむっつり助平で通してるの。誰かの影響なんか受けてないの。 自分の中にやりたい盛りの犬畜生でも抱えてるっていうのかしら。失礼な話よね。 「ねえねえ、あたし達の他にも使い魔いるよ」 ナイスグェス。話題変えよう話題。 グェスの指差した先では巨大な鍋……いや、釜かな。大釜が動いていた。 「あれは使い魔じゃありませんよ」 「使い魔以外の何にも見えないけど」 「あれは私の兄です」 ……血か。 昼食終了。お腹いっぱい。部屋に戻ろうとしたら呼び止められた。 「ルイズさんと私は皿洗い。グェスさんはデザートを配ってください。老師は食材の運び込みをお願いします」 「……なんですって?」 「ルイズさんは皿洗いですよ」 「何が?」 「老師とグェスさんの分の食事をもらいましたから、その御礼です」 貴族であるわたしに皿洗いをしろですって! なんて怒鳴りつける選択肢もあったかもしれないんだけど、なぜかわたしは厨房でお皿を洗っている。 ここんとこ説得されることに慣れてるってのもあるけど、それだけじゃない。 なぜか分からないけどあまり抵抗無いのよね。グェスから言われたことがまだ頭に残ってるのかな。 酌が無いだけマシだなんて思っちゃうんだけど、わたしの前世は酌婦でもしてたんだろうか。 ぺティは年寄りにあるまじき体力で荷物を運んでる。 わたしは黙々と食器を洗っている。 グェスもそれなりに頑張ってるんだろう。貴族に喧嘩売ってたりしなきゃいいけど。 で、ミキタカも隣で皿洗ってる。シエスタと楽しくおしゃべりしながらね。なんでこいつばっかりいい思いしてるのよ。 楽しそうに話するもんじゃないわよ。グラモンの男は口をきくだけで子種仕込むのよ。 「ねえシエスタ」 ミキタカとばっかり話してる。まるでわたしがお邪魔虫みたいじゃないの。ええい、だったらこっちから話しかけてやる! という決意の元話しかけたらそれだけでびっくりされるルイズマジック。何もそんな顔しなくても。 「あの……ミス・ヴァリエール、なぜ私の名前を?」 ……隠れ巨乳に注目して名前覚えてたなんて言ったらまずいよね。 「メイドの名前を覚えていることがそんなにおかしいかしら」 「も、申し訳ありません!」 なんでそんなにビビるのよー。別に怒ってないんだってばー。皿洗いの手ぇ止めてまで怯えることないってば。 「どうかお許しください……ミス・ヴァリエール」 そんな子犬みたいな目で見られてもなあ。身をすくませるシエスタに背徳的なものを覚えるけど、さすがにねぇ。 メイドの午後ワールドだったらすごいことしちゃうけど、ここ現実だし。しかもアウェーだし。 コック達の視線が柔肌に突き刺さる。いじめてるわけじゃないんだってのに。 「シエスタさん、ルイズさんは怒っているわけではありませんよ」 うわ、ずるっ。何よそのフォローのタイミング。こいつはそうやっていいとこ持ってくわけね。 ああ、シエスタの目。王子様を見る目。コックの人達がわたしを見る目……こわっ。何この落差。 何よ何よ、みんなでわたしを悪者にしちゃってさ。わたし抜きで勝手によろしくやってればいいじゃない。 「……お皿洗うの飽きた」 「そうですか」 「デザート配る方がいい。グェスと交代してくる」 いじらしいわたし。ただやめるだけじゃないあたりが成長してる証よね。自分で言ってて空しいけど。あーあ。 厨房ではちょっとしたアクシデントが起きていたけど、食堂ではちょっとどころじゃないアクシデントが起きていた。 今日のわたしは本当に裏目裏目。今日だけじゃないかもしれないけど、深く考えると死にたくなるから考えない。 メイド達が隅で震えている。生徒達は北の壁際を中心に、距離を保って半円状に囲んでいた。 そこから一人だけ抜け出てる子が……あれモンモランシーかしら。 てことはあの傍らにいるのが使い魔? あれが? 蛙って聞いてたけど……あれ蛙? 気持ち悪いことは間違いないけどねぇ。 「いい加減にしてギーシュ! いつまでそうやっている気なの!」 「お嬢様、我々は大変に目立っているようです」 「うるさい!」 懸命な呼びかけなんだけど、相手が大釜じゃ気の毒な人以外の何者にも見えない。 「うるさいのは君だモンモランシー! 君だけじゃない! 皆そうだ! 近寄るな! ぼくに近寄るな!」 うわ、ド修羅場じゃないの。 「そんなことじゃ友達いなくなるよ、ねっ」 「うるさああああい!」 大釜の中で怒鳴ってるもんだから、わんわんと響く響く。 グェスグェスグェス……あ、いたいた。物凄い勢いで野次馬の中に溶け込んでる。 「ちょっとグェス。これどうしたの」 近寄るなり、グェスはわたしの鎖を掴んだ。どんだけ寂しがりやよ。 「いやわかんないだけど。あの釜の中覗こうとしたヤツがいたらしいよ。で、ミッキー兄がキレチャッタってわけ」 ミッキー兄の部分につっこみたいけど今は放っておくことにする。 「だいぶアルコール入ってるみたいよ。ほら」 大釜の脇にはワインの瓶が二本、空になって転がっていた。 まさか一人であれ全部空けたってわけじゃないでしょうね。そんなやつ激昂させたらヤバイんじゃないの。 「近寄るな近寄るな近寄るな近寄るな近寄るな近寄るな誰も近寄るなァァァ!」 うわ……あれなんだっけ。ワルキューレだっけか。 「スッゲェ! ねえ、あれも魔法?」 「魔法以外でできるわけないでしょ」 こんなとこでゴーレム呼び出すなんて、完全に判断能力失くしちゃってるよね。 誰か先生呼んできた方がいいんじゃないの。それとも肉親に説得させるためミキタカ呼んでくるか。 「やめなさいギーシュ! 私の言うことが聞けないの!?」 待てよ……ミキタカを呼ぶ? またあいつにおいしいとことらせるってこと? 「お嬢様、その説得は逆効果でございます」 これは何か予感的なものを感じますでございますよ。わたしの見せ場にできるんじゃないかな。 「うるさい! ぼくに命令するな! どうせ死ぬんだ、もうどうなったってかまうもんかッ!」 ここで今日一日の帳尻を合わせる、と。いいね、これでいこう。 「待ちなさいギーシュ! 狼藉はそこまでよ!」 進み出た勇敢な美少女に集まる視線。ふふっ、今日のヒロインはわ、た、し。 「これ以上暴れたいのならわたしが相手になるわ!」 モンモランシーに小さくウインクをして、本気で傷つける意思が無いことをアピール。取り押さえればいいのよ。 「うるさいゼロのルイズッ! そんなに死にたいなら君から相手してやる!」 ワルキューレが武器を構えてこちらへ向いた。ふん、望むところよ。わたしの爆発なめるなっていうの。 「いくわよグェス! 援護しなさい!」 返事が無い。 「グェス、わたしの詠唱時間を稼ぐのよ!」 返事が無い。 「グェス?」 振り返ると、わたしの鎖を握っているのはなぜかマリコルヌだった。グェスはいない。 「何よマリコルヌ。何であなたがわたしの鎖持ってるのよ」 「君の使い魔、ぼくにこれ握らせて走っていっちゃったんだけど」 「は?」 「君が前に出た時、目にも留まらない勢いで」 「は?」 え? 何? は? あ? あ……あの女アアアアアアアア!
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前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第二話「これがウルトラの歴史だ!」 変身怪獣ザラガス 地底怪獣グドン 宇宙大怪獣ベムスター 雪女怪獣スノーゴン 用心棒怪獣ブラックキング 登場 『ヘアッ!』 『ガアアアアアアアア!』 新設されたばかりですぐに半壊させられた児童会館の前で、赤と銀色の巨人が一匹の巨大怪獣相手に戦っている。 怪獣の方は、攻撃を受ける度に体質変化を起こして、以降同じ攻撃に対する耐性を取得してパワーアップする 恐るべき能力を持った大怪獣ザラガス。そして巨人の方は、ウルトラマンゼロの大先輩にして、 現代の人類が記録している中で最初に地球に来訪して数々の怪獣の脅威から地球を護った偉大なる光の戦士、 初代ウルトラマンである。 しかしこの戦いは現在行われているものではない。ウルトラマンが地球を護っていた頃の、 アーカイブ映像なのであった。 『ヘアッ!』 ウルトラマンはザラガスのフラッシュ攻撃を食らって一時的に失明してしまったのだが、 敵の気配を敏感に察知することで、背後から忍び寄っていたザラガスの後ろ蹴りを浴びせて返り討ちにした。 『ガアアアアアアアア!』 蹴り飛ばされて転がったザラガスだが、起き上がると鉄塔をもぎ取って、それを武器にウルトラマンに接近する。 対するウルトラマンは、目が見えないというハンデがやはり大きく、無防備である。ウルトラマンのピンチ! そこに当時の地球防衛隊に当たる科学特捜隊自慢の万能戦闘機、ジェットビートルが飛来。 鉄塔を振り上げて今にもウルトラマンに攻撃しようとしていたザラガスの口の中に砲撃を撃ち込んだ! 『ガアアアアアアアア!』 その一撃ではザラガスを倒すには至らなかったが、攻撃を阻止して動きを止めさせることは出来た。 『ヘアッ!』 そしてジェットビートルが時間を作ってくれたお陰でウルトラマンの視力が回復。 直ちに彼の代名詞ともいえるスペシウム光線を発射した。 ザラガスは攻撃に対しての急激な進化を繰り返す恐ろしい怪獣だが、体質変化を起こしている最中に 更に受けた攻撃を耐えることは出来ない。その唯一の弱点を突かれて、ザラガスは絶命して大地に倒れた。 『シュワッチ!』 怪獣を倒して役目を終えたウルトラマンは、いつもそうするように、この時も空に飛び上がってどこかへと去っていった。 場所はガラリと変わり、岩山が連なる山脈。ここにウルトラマンの次に地球を度重なる 悪性宇宙人の侵略から守護していた深紅の戦士、ウルトラセブンが、十字架に閉じ込められて横たえられていた。 この時の彼はガッツ星人という侵略者に敗れて、地球人への見せしめとして処刑されかけていたのだ。 だがウルトラセブンを復活させる方法を知ったウルトラ警備隊が彼の所在地を突き止め、 間一髪のところでエネルギーを与えたことにより、セブンは再び立ち上がる! 『ジュワッ! ジュワーッ!』 指先からブレーク光線を発して、自らの動きを封じる十字架を破壊。勢いよく立ち上がると、 処刑しようと近づいていたガッツ星人の円盤をハンディショットで全機撃墜した。 『ジュワッ!』 そして飛行して円盤の母機の前へ接近。敵の攻撃をウルトラVバリヤーで防ぐと、 太陽光線からエネルギーを更に吸収して力を蓄え、ハンディショットを連発して円盤を集中的に攻め立てる。 『ジュワッ!』 十分攻撃を加えたところで、頭についているセブン一番の武器、アイスラッガーを外して空中に固定。 それにハンディショットを当てて威力、発射速度ともに増加させるという大技、ウルトラノック戦法を繰り出した! 『ジュワーッ!』 アイスラッガーの強烈な一撃を受けた円盤は跡形もなく粉砕され、ガッツ星人の侵略計画はここに潰えた。 更に場所は変わり、東京のど真ん中。異常気象の影響で目覚めた怪獣の一体であるグドンに、 地球を護る命を帯びて来訪した後のウルトラ兄弟の四男、ウルトラマンジャックが挑む。 『グオオオオオオ!』 『ヘアーッ!』 この時はグドンの他にツインテールという別の怪獣がいて、ジャックは二対一の状況に苦しめられていたのだが、 MATの活躍によりツインテールとグドンが衝突。結果ツインテールが絶命し、ジャックとグドンの一騎打ちの形になった。 そしてこうなったからには、ジャックは負けない。 相手の懐に潜り込み、グドンを背負い投げ。その後体当たりを食らって地面に転がるが、 向かってくるグドンの足を刈って転倒させた。 『グオオオオオオ!』 『ヘアァッ!』 グドンとジャックの激闘が続くが、ジャックがグドンの身体を捕らえて放り投げたことで、 叩きつけられたグドンの動きが鈍る。その隙を逃さずにスペシウム光線が発射された。 必殺光線がグドンを瞬時に爆散させ、二大怪獣は両方とも倒された。東京は救われたのだった。 ……以上、三つの戦闘が立て続けに流されると、才人の通信端末の画面が暗転した。 そうするとルイズが画面から目を離し、才人に向き直る。 「……これって、本当にあったことなの?」 「ああ。もちろんだ」 見せられたものが現実のものと信じ切れないルイズの問いに、才人はコックリとうなずいた。 ウルトラマンゼロと三怪獣の戦闘が終わると、魔法学院は上から下までひっくり返ったかのような大騒動となった。 あの怪物たちは一体何だったのか、そして魔法が全く通用しなかったそれらを更に上回る力で以て瞬殺した 青と銀の巨人は何者なのか、自分たちの目の前で何が起こっていたのか。誰もが様々な推測を立てたが、 「宇宙」という概念も根づいていないハルケギニアの人間では、答えにたどり着く者は一人も出なかった。 はっきりしているのは、この件の報告を受けた王室が直ちに調査団を派遣することを決定したことくらいである。 しかしただ一人、ルイズだけは、才人はゼロに変身するすぐ近くにいたため、 二人が同一人物ではないかという推測を立てることが出来た。そしてその日の晩に自室に戻ると、 すぐに才人を問いただし出した。その結果、才人は手始めに、ハルケギニアにやってきた直後にも披露した通信端末の、 以前は話がややこしくならないようにあえて見せなかったウルトラマンと怪獣の戦いの録画を見せたのである。 映像を見終えたルイズはしばらく頭を抱えていたが、考えが纏まったのか顔を上げて声を発する。 「あまりに信じがたいことだけど……でも今日カイジュウ? っていうものを実際に見ちゃったし…… 信じるしかないわよね。あんたが、別の世界から来たってことも」 「何だよ。信じてなかったのか?」 「当たり前よ。突飛がなさすぎることだから、それを見せられても半信半疑だったわ」 問い返してきた才人にそう答えると、次の質問に移る。まだまだ聞きたいことは山ほどあった。 「あのカイジュウたちが、あんたの世界の生き物だってことは分かったわ。けど、そいつらと戦ってた、 うるとらまんって巨人は何者なの? 今日実際に私たちの目の前に現れたあいつは、サイト、 あなたってことでいいのかしら?」 この問いに、才人は返答に困る。 「う~ん……実はウルトラマンのことは、俺も全部を知ってる訳じゃないんだ。俺とウルトラマンゼロは、 今は同じ身体を共有してるだけで、別人だしな」 「言ってることがよく分かんないんだけど……名前はウルトラマンゼロ、でいいのね? 気に入らない名前だけど……とりあえず、そのゼロと話をさせてもらえないかしら?」 自分の蔑称そのままなので不快に思うルイズだが、それは置いておいて、ゼロと直接会話できないかと考えてそう頼んだ。 すると才人は余計困る。 「ゼロと話を? いいのかなぁ……」 『俺なら構わないぜ』 突然ゼロの声がしたので、才人は驚いて左腕のブレスレットを顔の前まで持ち上げる。 「うわッ! 急に話しかけるなよ。心臓に悪い」 「えッ!? 今の、どこから声がしたの!?」 ルイズも驚いていると、ゼロが感心したようにつぶやく。 『へぇ、今の聞こえたのか。才人にだけ言ったつもりだったが、これも契約ってもんをした影響なのかね』 「そうなのか……。それでゼロ、本当にルイズと話しするのか?」 『ああ。共同生活をする以上、俺とウルトラマンのことを教えないままって訳にはいかないだろうからな。 さぁ、こいつで俺と代わってくれ』 ブレスレットからウルトラゼロアイが出てくると、それを目にしたルイズが驚く。 「わッ! また出てきた! そのブレスレット、どういう仕組みなの?」 「ウルティメイトブレスレットっていうんだって。ゼロの大事なアイテムだってさ」 簡単に説明した才人が、ウルトラゼロアイを装着する。 「デュワッ」 その途端に才人の身体が光り輝き、瞬時に身長はそのままにウルトラマンゼロの姿となった。 『よう。俺がご紹介にあずかったウルトラマン。ウルトラマンゼロだぜ』 「ほ、本当に才人がウルトラマンってのになった……大きさはそのまま……」 しばし呆然としていたルイズだが、気を取り直してゼロ本人に質問を始めた。 「そ、それじゃあウルトラマンゼロ……あなたたちウルトラマンって、一体何者なの? どこから、何のためにこのトリステインにやってきたのかしら? 教えてもらえる?」 『ウルトラマンのことか……。色々と話すべきことが多くて、さてどこから話したもんかな』 しばし考え込んだゼロは、やがてこう切り出す。 『そうだな、ここは一からその目で見てもらおうか。その方が理解しやすいだろうしな』 「え? 見てもらうって、何を?」 『すぐに分かるさ。才人もついでだ。それじゃ、始めるぞ』 説明もおざなりに、ゼロは腕を組んで精神を集中し出す。 『はぁッ!』 そして掛け声が発せられると、ルイズの視界が急転。自室から、数多の星が輝く宇宙空間のビジョンへ放り出された。 「えぇッ!? な、何これ!? 私夜空に浮いてる!?」 「うおッ! こりゃすげぇな!」 「サイトまで!?」 気づけば才人が隣に浮いていた。混乱している彼女に、どこからかゼロの声が響いてくる。 『落ち着け。これは本物じゃない。俺が超能力で見せてるビジョン、幻影のようなもんだと思ってくれ。 場所が移った訳じゃないぜ』 「幻影……なるほどね」 『じゃあ説明を始めるぞ。まずは……ルイズ、お前が毎日見てる空の、その向こう側には何があると思う?』 ゼロは最初に、ルイズに宇宙の概念を教えることから始めた。 「空の向こう側? そんなの考えたことないんだけど……その先ってどこまでも続いてるものなの?」 『ああ。空の向こうには宇宙っていう果てしなく広い空間が続いてて、そこにはいくつもの星、 つまり大地や、太陽と同じ恒星が無数に存在し、様々な生命体が活動してる。夜に見る夜空の星の きらめきの正体がこの恒星さ。お前たちがハルケギニアって呼んでる大地も、宇宙に存在する星の一つにあるものなんだ』 「な、何だかついていけないんだけど……」 『まぁここで無理に理解してくれなくたっていい。とにかく、遠い空の彼方にも大地があるってことぐらいには思ってくれ』 簡単に宇宙を説明すると、ルイズと才人の目の前に惑星のビジョンが現れた。 「これは……?」 『これははるか昔のM78星雲の惑星、ウルトラの星。ここが俺たちウルトラマンの故郷だ』 惑星の表面がズームアップして、星の大地に暮らす人々の様子が見えた。彼らは今のウルトラマンとは違う、 地球人やハルケギニア人とほぼ同じ容姿をしている。 『俺たちはかつて、お前たちと変わりない種族の人類だった。だが、27万年前に運命が大きく変化した』 突然ウルトラの星の太陽が爆発し消滅。ウルトラの星は暗黒に包まれる。 『27万年前に太陽が大爆発を起こして消えてしまったんだ。そのため、ウルトラの星は光を失ってしまった』 「た、太陽が爆発って、それ大丈夫なの!?」 まだ「宇宙」を理解していないルイズだが、それがとんでもない事態であることは想像がついた。 『もちろん大事態さ。光を失ったら、星全体の命が死に絶える。だが俺たちの先祖は決して諦めなかった。 太陽がなくなったなら代わりを作ればいい。星の住人が力を合わせることで人工太陽プラズマスパークの開発に成功し、 ウルトラの星は全滅をまぬがれたんだ』 真っ暗の世界にプラズマスパークの輝きが広がり、星は命を取り戻した。 『だがプラズマスパークは、予想をはるかに超えた恩恵を俺たちの先祖に与えた。 プラズマスパークから発せられるディファレーター光線が、先祖たちの身体を全く別のものに変えたんだ』 ルイズと才人の見ている前で、ウルトラの星の人間の姿が、超人ウルトラマンのものへと変貌した。 『これが今で言うウルトラマンの誕生さ。だがウルトラの星の人間は元々争いを好まない性質だから、 与えられた新しい力と姿を持て余してる感じだった。四万年前まではな』 「四万年前までって……その時に何かあったの?」 ルイズが問いかけた瞬間、目の前に広がる光景がウルトラの星のものから大きく変化し、 大勢の異形の集団が出現した。 『ギアァッ! ギギギィッ!』 『パオオオオ! パオオオオ!』 『グアアアアァァァァ!』 ベムスターやスノーゴン、ブラックキングなど、数々の種類の怪獣軍団の背後にテンペラー星人や メフィラス星人、グローザ星系人、デスレ星雲人ら宇宙人軍団が並び、更にその後ろで、 漆黒のまがまがしい雰囲気を湛えた怪人が全体の指揮を取るように腕を上げている。 『四万年前に、エンペラ星人という宇宙中を荒らすとんでもなく悪い奴が大怪獣軍団を率いて、 ウルトラの星に攻めてきたのさ。俺たちウルトラ一族と怪獣軍団の戦いは長く続いたが、 後のウルトラの父となるウルトラ戦士がエンペラ星人を下したことで戦乱は終わりを迎えた。 だが放っておけばまたエンペラ星人のような奴が宇宙のどこかに現れ、宇宙の平和が乱されるんじゃないかと 考えたウルトラの父は、平和を乱す悪者を退治する宇宙警備隊を組織した』 怪獣軍団が消えると部隊がウルトラの星に戻り、星からたくさんのウルトラ戦士が宇宙へ向けて 飛び立つ様子がルイズたちの目に入った。 『俺たちウルトラマンが才人の故郷である地球という星と関わったのも、宇宙警備隊の活動の中でだ。 ある時一人のウルトラ戦士が逃亡した凶悪な宇宙怪獣を追って、地球に降り立った。彼はその星が怪獣や 他の星からの侵略者の危機に晒されていると知ると、地球に住む命を助けるために地球に留まった。その戦士が、 地球人から「ウルトラマン」の名前を授かった最初の一人になったのさ』 ルイズと才人の目の前に、そのウルトラ戦士の姿が映し出される。言うまでもなく、 ウルトラマンその人である。 「この人は、さっき見た……」 『彼がウルトラの星に帰った後も、何人もの戦士が地球に危機が訪れる度に出向き、 地球人を助けてきた。これが、地球との関わりを含めたウルトラの星の歴史の大体さ』 ウルトラマンに続いて、ウルトラセブン、ジャック、エース、タロウ、レオ、80、メビウスの姿が現れては消えていった。 「ウルトラマンって、こんなにいるのね……」 「俺もウルトラマンのことは授業で聞いたけど、こうして見ると何だか全く違う話みたいだなぁ」 呆けるルイズの隣で、才人がしみじみ語った。 『そしてこの俺、ウルトラマンゼロは今、ルイズ、お前の暮らすハルケギニアのあるこの星に 邪悪な何者かの魔の手が忍び寄ってるとの情報を受けて、侵略者を倒してこの星を護るためにやってきたんだ。 このハルケギニアに存在してないはずの怪獣が出現したのも、そいつの影響だろうな。これで分かったか?』 「えぇーッ!? そ、そんなことになってたの!? その私たちの星を狙う奴の正体は!?」 ゼロの目的を知り、ルイズは目をひん剥いて絶叫した。 『残念だが、そいつを調べるところも俺の任務だ。つまり正体は不明。だがいずれ調べ上げて、 俺がとっちめてやるぜ!』 とゼロが宣言すると、ビジョンが消え去り、元のルイズの部屋の光景に戻った。 才人のビジョンも消える。 『今ので大体のところは理解してもらえたか?』 「そ……想像してた以上の話だったわ……私、とんでもないのを使い魔にしちゃったのね……」 途方もない大きさの話に、ルイズはすっかり圧倒されていた。そんな彼女にゼロが頼みごとをする。 『今日現れたような怪獣が、またハルケギニアのどこかに出現することだろう。その時俺は、 そこに飛んでいって怪獣と戦わなきゃいけない。そんな訳で度々この学院を離れなきゃならない。 当然俺と一体化してる才人も一緒なんだが、時々いなくなるのを許してもらえるか?』 「ま、まぁ……使い魔が勝手に私の側から離れるのは不本意だけど……人の命が懸かってるんじゃしょうがないわね。 あんまりうるさくは言わないでおいてあげる」 さしものルイズも、ゼロの役目を受け入れざるを得なかった。だが、ここでふと疑問がわき上がる。 「でも待って。あなた、どうしてサイトと身体を分け合ってるの? 本来は別人なんでしょう? 何かと不便なんじゃない?」 『そこはちょっと訳があってな……今の才人は俺がいないと、命がなくなっちまうんだ。 だから離れることが出来ないんだよ』 「よく分かんないけど……だったらだったで、サイトの姿じゃなくてずっと今の姿でいればいいんじゃないかしら? どうして今日戦う時になって初めてその姿になったの?」 ウルトラマンのことを少しでも知る者ならばすぐに分かる理由について尋ねかける。 『そうしたいのは山々だが、そうもいかないのさ。ウルトラマンの力は途方もなく大きなもんで、 俺自身ウルトラマンとはどこまでのことが出来るものなのか完全には把握してない。 だがそのせいなのか、エネルギーの消耗が半端なくてな。環境によっては、ごく限られた時間しか 本来の姿を保ってられないんだよ。このハルケギニアでもそうなのさ。だから必要じゃない時は、 才人が表に出てるって訳だ』 「ふぅん……ウルトラマンになるというのは、いいこと尽くめって訳でもないのね」 納得したルイズに、ゼロが胸の青いランプを指し示して見せる。 『この胸のカラータイマーが赤く点滅し出したら、限界が近い合図だ。後、才人がこの俺、 ウルトラマンゼロってことは黙っててくれよ。無用な騒ぎを起こしたくはないからな』 「分かったわ。言っても、誰も信じないだろうしね」 『言うべきことはこれで全部かな。それじゃ、才人に戻るぜ』 ひと通りの説明を終えたゼロが目の部分に手を当てると、ウルトラゼロアイが身体から分離して、 同時に才人の姿に戻った。 ゼロからの話が終わると、ルイズは大きなため息を吐いた。 「ふぅ……あまりに壮大な話を一気に聞かされて、疲れちゃったわ……。今日はもう休むから、 サイト、あなたも早く寝なさいよ。急に態度が変わったら怪しまれるだろうし、 明日からも普段通り接するからね。洗濯サボるんじゃないわよ」 「はいはい。分かってますよっと」 「それと……その……」 忠告したルイズは、途中で歯切れが悪くなったが、やがて声を絞り出した。 「今日は、ありがとう。危ないところを、助けてくれて」 すごく照れくさそうに礼を言われて、才人は思わず面食らったが、すぐに顔をほころばせた。 「気にすんな。当然だろ」 「どうして?」 「俺はお前の使い魔だろ」 「……!」 それを聞いたルイズはぎくしゃくとした動きでベッドに横になり、間もなく寝息を立て始めた。 彼女が就寝すると、才人は苦笑を浮かべた。 「いつもは何かとやかましいけど、可愛いところあるじゃん」 それから、ブレスレットを介してゼロに尋ねごとをする。 「ところでゼロ、一つ聞いておきたいことがあるんだけど」 『まだ何かあるのか?』 「ギーシュの奴との決闘の時、俺すごい力を出しただろ? あれってやっぱりお前が力を貸してくれたのか?」 ずっと気になっていたことを確かめると、ゼロからは意外な答えが返ってきた。 『いいや、違うな』 「え? そうなのか?」 『俺も途中で手助けしてやろうと思ったんだが、実行する寸前にお前がものすごい剣の腕を発揮したんじゃねぇか。 正直驚いたぜ。お前って強かったんだな』 「まさか! 俺はここに来るまでは、ただの高校生だったんだぜ? 剣を握ったことなんて一度もないよ。 ましてや、青銅を真っ二つにするなんて」 才人が否定すると、ゼロはやや考え込んだようだった。 『それもそうだよな……。だったら、左手のルーン文字が関係してるのか』 「左手のルーンだって?」 ルイズとの契約の証であるルーンに目を落とす才人。 『お前が剣を握った瞬間、そのルーンが光ったんだよ。聞けば、使い魔ってもんは特殊な能力を得るもんじゃないか。 強くなったのは、その能力によるものじゃないか?』 「そうなのかなぁ……」 腑に落ちない才人なのだが、自分と同じくハルケギニアに来たばかりのゼロが正解を知っているはずがない。 夜も遅いので、結局謎の解明はしばらく保留となるのであった。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
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前ページゼロの使い魔「魂を紡ぐ者」 『ホワイトスター(ネビーイーム)内部』 そこでは蒼と紅の巨人がぶつかり合っていた。 周りには巨人の残骸が転がっている。そして彼らの奥では轟音が響き渡り続けている。 蒼の巨人はすでにボロボロになっていた。 元は文字通りの蒼だったろうが今では黒こげになっている部分は吹き飛ばされている部分がある。 蒼の巨人に搭載されいてる自己回復が追い付いていない証拠だった。 だが、紅の巨人はそれの好機を狙わない、いや…「狙えない」。 紅の巨人もボロボロだった、特徴的である右腕のバンカーも残弾は一発限り、左腕の「五連チェーンガン」にいたっては一発も残っていない。 紅の巨人に残された攻撃手段は最早「リボルビング・バンカー」と「プラズマ・ホーン」しかなかった。味方は「インスペクター」と戦っているため増援は期待できないもっとも…増援などという野暮な行為は彼は使わないつもりだが。 「どうした! 仲間がいなければ何もできないわけでないだろ!」 蒼の巨人の左腕が動く、その狙いは紅の巨人の胸…すなわち全ての巨人の弱点。 「っち!」 紅の巨人が右腕のバンカーを構える。 だがその動作をいち早く察知した蒼の巨人が紅の巨人を蹴り飛ばす。 「くぅ…っ!」 紅の巨人が揺らぐ。そしてその隙は蒼の巨人を動かすのに十分だった。 「もらったぞ!」 蒼の巨人が奔る。その両腕が淡く輝く。その輝きは蒼の巨人を包む込むまでになる。 エネルギーはほぼ0に近い、それならば… 文字通りの「必殺」で「粉砕」するだけになる。 「コード・麒麟」それが彼の「必殺」だ。 「コード・麒麟! 砕け散れ、キョウスケ・ナンブゥッ!!」 肘の噴出孔から淡く輝く刃を作り出す。 蒼の巨人はその刃で紅の巨人の巨人の左肩をそのまま抉るように吹き飛ばす、そしてもう片方の肘の刃で今度は右肩を吹き飛ばそうとしたところで… 「その技…そしてその隙。待っていたぞ!」 紅の巨人のブースターが限界まで吠える。いや…限界を僅かだが超えた。 蒼の巨人が避ける間も無く紅の巨人は距離をほぼ完全に零距離にする。 「賭けるか? これでどちらが生き残るかを!」 右腕の「リボルビング・バンカー」を蒼の巨人の胸に突き刺して撃つ、それだけなら蒼の巨人は立ち上がれただろう…そう「バンカー」だけで済んでいたならば…だ。 「…貴様、正気か!?」 蒼の巨人…いや「アクセル・アルマー」が叫ぶ、それは当然だった。 なぜなら紅の巨人の両肩が展開しているのだ…「アヴァランチ・クレイモア」本来なら離れて使う代物だ。接近している状態では紅の巨人もただでは済まないだろう。 だが…紅の巨人…「キョウスケ・ナンブ」は全てをこれに賭けていた。 「クレイモア…全弾貰って行け! アクセル・アルマー!!」 両肩の「アヴァランチ・クレイモア」が咆える。 その轟音と共に蒼の巨人は見る見る朽ちていく。 ボロボロだった蒼の巨人は遂に膝を突く。 左腕はない頭部も吹き飛ばされている。なんとか胸部が無事だったのはただ「接近しすぎた」というまぐれでしかなかった。 「…俺の勝ちだったな…アクセル・アルマー…」 紅の巨人は後ろを向いて味方が戦っている場所へ向かう。 もう勝敗は完全に決している。そしてかける言葉もない。 「…止めはささないか…ふっ。どちらにしても、もう…ソウルゲインは限界だがな…」 アクセルはただキョウスケが向かった方角を見続けている。 「…キョウスケ・ナンブ…お前に執着しすぎたのが…俺が負けた原因だ…これがな」 蒼の巨人の関節から火花が散り巨人が倒れる。 そのまま立て続けに爆発が起こりついにコクピットへと火花が散り始める 「レモン、先に行ってるぞ…」 そして爆発がついに蒼の巨人を包む。 その爆発は…鏡らしきものが巨人をスキャンするように素通りした直後に起こった。 あとは残骸が残るだけ…。そう残骸が…残るだけだった。 『トリステイン学園 中庭』 「…今度こそ…」 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエールは精神を集中した。周りの野次のせいでほとんど集中できないがそれでも集中しようと努力する。 「もう、やめろよルイズー」 「平民でも連れて来て雇ったほうがはぇーぞー?」 「まぁ、ゼロのルイズだし。仕方がないとおもうぜ?」 「それより、早くおわってよー。私の「ステファン」が寝そうなんだけどー?」 馬鹿にする声。ほとんど諦めている声。 ルイズは少し眉をヘの字にしてしまうが。それでも集中する。 そして、声をあげる。これで最後にしたいから。その思いも込めて。 「宇宙のどこかにいる私の下僕(しもべ)よっ!」 周りの野次が止まる。それはただ単純に「失敗したら大笑いしてやれ」という「失敗」が前提の嵐の前の静けさだった。 「強く、美しく、そして生命力に溢れた使い魔よ!私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」 別世界にいるどんなものでもいい。それこそ猫でもいい。…できればフクロウあたりがうれしい。 そんな思いを込めて杖を振り下ろす。 次の瞬間爆発が起きるのはやはりお約束だった。 「どぅわ!? また失敗かよー」 「まぁ、ゼロのルイズだし」 「ちょっとー。ステファンがびっくりしてるわよー」 「どーせ、失敗なんてお約束ってやつだしなー」 ついにルイズの堪忍袋は限界を迎えた、爆発による砂煙を背にするように野次を飛ばしたクラスメイトのほうを見て叫ぶ。 「うるさいわね!、アンタ達のせいでまた失敗したじゃー…え?」 声を荒げながら再び爆発した方を見た瞬間…ルイズは硬直した。 そこには蒼い3メイル前後のゴーレムらしき者がいた。 形状として明らかに「殴り合い」に適している、 手の甲と肩などに緑色の宝玉らしきものが輝いている、そして一番の特徴が…鬚だった。だがダサイなどは感じないむしろ「かっこいい」や「強そう」というのが最初に浮かび上がる姿だった。 「うそだろ…あのルイズが!?」 「ちょ、なにあれ…あんな芸術LVのゴーレムを…ゼロのルイズがっ!?」 「というか…あれ。ゴーレムなのか? むしろガーゴイルな気が…」 騒ぎ出すギャラリー達。それは「失敗」によぶ馬鹿にする声ではなく「成功も成功」にたいする驚愕による騒ぎだった。 「…やった…私が…あんなすごいゴーレムを…っ!」 ルイズはコルベールの「危険です。まずは様子を!」という声が聞こえないほど舞い上がっていた。そして近づく。 …反応はない。こちらを見て警戒もしないそもそも瞳がある部分が真っ黒なところを見ると眠っているとルイズは判断した。 実際は機能が一時的ながらスリープモードになっているだけなのだが…それをルイズは知らないし。知る必要は無かった。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 杖を一度振りそのまま口…というかマスク部分に口づけをするルイズ。 そして蒼いゴーレムの左腕の宝玉と思われる部分にルーンが刻まれるとほぼ同時に…蒼いゴーレムの瞳が紅く輝いた。 「おい…、なんだ貴様は」 少し低い声が聞こえる。 ルイズは誰が喋ったのかと周りを見渡すが…周りにいるのは生徒とコルベールだけだ。そもそも青年のような声を出せる人物がいない。 「お前の眼の前だ、ピンクの髪をした女」 今度は前を見る、そこにはつい先ほど契約を交わした(一方的だが)蒼いゴーレム。 「え…まさか、アンタが?」 ルイズは尋ねる。もしかしたら誰かが風の魔法で声を送っているだけだと思ったからだ…もちろんイタズラだったらそれを実行した人物を殴ると心に誓っておいてだ。 「そうにきまっているだろ、それにここはどこだ。ホワイトスターではないようd「い、いやったぁぁぁぁっ!! 喋る蒼いゴレーム! これならキュルケにだって劣らないわきっと!」…」 蒼いゴーレム…アクセルはなぜか喜ぶピンクの髪をした少女を見て少し戸惑う。 それに疑問がいくつかあった。 一つ「なぜ宇宙空間に浮かんでいるホワイトスターにいたはずの自分が地上にいるのか」 これは転送装置がウンヌンカンヌンで説明がつくかもしれない。 だが次から説明ができなくなる。 一つ「なぜボロボロだったソウルゲインが完全に直っているのか」 アクセルの記憶が正しければ左腕や頭部は吹き飛ばされていて最後は大爆発をしたはずだ、だが今のソウルゲインはほぼ完全に修復されていた。 自己修復能力だけでは説明がつかないほどにだ。 そして最後の一つ…これが一番重要だった。 「なぜか自分=ソウルゲインのような感触になっている。そしてなぜか3m前後まで縮んでいる」 これはもはや説明という説明ができなかった。目を覚ました時には自分の体を動かそうと思えばソウルゲインの体が動く。おまけに全長が3メートルまで縮んでいる。でなければルイズという女性がアクセルにキスということができないはずだ。 なぜなら本来のアクセル…いや、ソウルゲインは全長「41.2m」 大きさでいえばアルトアイゼン・リーゼの約二倍の大きさ。ビルよりも大きいのだ。それが3m、スペックはかなりに下がっていたり「コード・麒麟」によくわからないリミッターがつけられてたりしているが。実質スケールサイズした程度だ。 性能で言えばこの状態でもリオン相手なら簡単とはいかなくても倒せれる。 という感じだ。 また攻撃力以外。スピードはフルドライブさせれば「コード・麒麟」を本来以上のスピードで繰り出せるほどになっていた。 これにはアクセルも理解できなかった、ただまぁ…言えることは。 「訳がわからんな…これがな」 それだけだったのはたしかだろう。 前ページゼロの使い魔「魂を紡ぐ者」
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前ページ次ページゼロの使い魔・ブルー編 「待て」 その言葉に、食堂が静まり返る―…と言うことはなく、 騒がしいままではあったが、その声は届いたようだった。 「……何だね君は」 ギーシュは顔を歪め、不機嫌な表情――顔が腫れているので、 口調からの推測だったが――と、不機嫌な口調で返した。 それに対しても平静を保ち、ブルーは言う。 「誰でも良いだろう」 「……そうか、君はたしか『ゼロ』のルイズが呼び出した平民だったな? 平民が僕に何のようだ」 「お前が悪い」 いや、実に簡潔な発言だった。 解りやすく、また同時に間違っていなかったため、 周囲の者達もその言葉に乗り、ギーシュを笑い始めた。 「そうだギーシュ!お前が悪い!」 「二股をかけてたのはお前だからな!」 「恋人が居るだけで許せんのに二股をかけるとはどういう事だギーシュ!?」 一人だけ暗い感情を隠してないものが居たような気もするが。 平手打ちを喰らい、華麗な裏拳を決められ、 周囲から笑われたギーシュは、瓶を拾っただけのメイドより、 自分が笑われる原因となったこの生意気な平民に怒りの矛先を向けることにした。 「君は貴族に対する礼儀を知らないようだな?」 「知った事じゃないな」 ブルーがそう返すと、 ギーシュは芝居がかった仕草で続ける。 こういうときでさえギーシュは格好を付けることを忘れない。 それは賞賛に値することだとは思える。 「フン、ならばこの僕が君に礼儀を教えてあげよう。 ヴェストリの広場に来たまえ!そこで平民と貴族の差を示してやる」 「別に構わん」 そう言うと出口へと歩き出す。 ギーシュの友人達がその後をついて行く。 震えていたシエスタが、暫く経ってから言う。 「あ、あなた……殺されちゃうわ。平民が貴族に逆らったら……」 「大丈夫だ」 そう言ったものの、シエスタは青白い顔をしながら走り去ってしまった。 それと入れ違いになるように、ルイズが近寄ってくる。 「ブルー!何してんのよ!?」 「……どうもヴェストリの広場とやらに行かなければいけないみたいだが」 相変わらず平静を保つブルーとは対照的に、 ルイズは激昂しているようだった。 「そうじゃなくて!何で決闘の約束なんてしてるのよ~!」 「決闘の約束だったのか?……まぁ、問題はないな」 そこで初めて決闘の約束をしたことに気付いたらしい。 その様子を見て少し呆れながらもルイズは続ける。 「あのね!……ちょっとこっち来なさい!」 途中で少し逡巡しながらも、ルイズはブルーの手をとって食堂から連れ出した。 間違いなく人の目が無い自分の部屋まで来てから、 ルイズは話し始める。 「……まぁ、この際だから決闘の約束の事には何にも言わないわ。 だけど、どうやってギーシュと戦うつもり!?あれでもメイジよ!」 「術を使えば――」 「ほいほい使うなって今朝方言ったでしょ!」 「……そうだったな」 「……どうするのよ」 二人とも黙り込む。 結構長い間沈黙を保っていたが、そのうちルイズが言う。 「今なら謝れば、許して貰えるかも」 「何で謝るんだ?」 「……それはそうだけど、謝らないと許してはくれないわよ」 その言葉を受けて、考え込むブルー。 またしばらくの時間が過ぎる。 が、ブルーは突然何かを閃く。 「要するに術を使ってないように見せれば良いんだな?」 「……え?そんなこと出来るの?」 「やり辛いことは確かだが、出来る筈だ」 ブルーは自信というよりは確信を持った口調で言い放った。 「諸君!決闘だ!」 ギーシュが両手を広げて叫ぶと、周囲から歓声が帰ってくる。 尚、顔はすでに治療済みである。 打撲ぐらいなら案外簡単に直せるのだろう。 「ギーシュが決闘するぞ!相手はルイズの使い魔だ!」 歓声に答えて、薔薇の造花を振ったり、 手を振り返しているギーシュに比べ、 ブルーは非常に落ち着いていた。 一通り歓声に答え終わったギーシュがブルーの方に向き直ると、 周りの観客にも聞こえるように語り始めた。 「まずは逃げずに来たことを褒めてやろうじゃないか、平民」 「逃げる必要もないな」 「……ふん、そんな口を利けるのも今の内だ!始めるぞ!」 ギーシュが薔薇の造花を振ると、 薔薇の花びらが宙に舞い、一体の女戦士の形をした銅像となった。 それがブルーの前に跪く。 「僕はメイジだ、だから当然魔法を使って戦う。 まさか文句は無いね?」 その言葉に応えるように、跪くように座っていたその銅像が立ち上がる。 「僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。 僕が青銅のゴーレム、『ワルキューレ』が君の相手をしよう」 それに対し、ブルーは右手を前に突き出し、言う。 「そうか、なら俺は――」 ~~~~ 「良いかルイズ。 使うのはたった二つの術だ。『剣』と『金貨』」 「……何よそれ?」 「見れば解る」 ~~~~ 「俺は手品師だ」 と言って、何も持っていなかった右手に『金貨』を現す。 その言葉と、その『金貨』を見て、ギーシュは思わず言ってしまう。 「……は?」 「だから手品を使って戦う。問題はないな?」 そして、今度は『金貨』を消してみせる。 周囲が黙り込む。 そして、次の瞬間には笑い出す。 「ふ……はは、あっはっは!」 「おい聞いたか!手品でメイジに挑むらしいぜあの平民は」 「こいつは笑えるな!」 ルイズと、後二人……いや、四人だけが冷静に見つめていた。 ギーシュはと言うと、馬鹿にされたと思ったらしい。 「ふざけるのもそこまでだ!」 と言い、ワルキューレをけしかける。 それに対し、ブルーは両手を服の内側にしまい込む。 次の瞬間、笑いが一気に止まる。 手品を使って戦うといった平民は、懐からアホみたいな量のナイフを取り出した。 「このナイフの束からどうやって逃れる?」 それにしてもこのブルーノリノリである。 ともかく、ブルーはその『剣』を全てギーシュに向かって投げつける振りをする。 実際は投げている振りをしているだけで、『剣』の力で飛ばしているのだが。 自分に向かってくるナイフを見て、ギーシュは叫ぶ。 「ワ、ワルキューレ!」 青銅のゴーレムが重そうな外見にそぐわぬほど俊敏な動きをみせ、 ナイフを身体で受け止める。 それはブルーが『剣』を投げるのを止めるまで続いた。 ギーシュは冷や汗をかきながらも、続けた。 「は、はは……少しは焦ったが、所詮は僕のワルキューレの敵ではないな」 そして、再び薔薇を振り、6体のワルキューレを作り出す。 これで既に作られて居たワルキューレを含め、7体となった。 「……だが、剣を使うとは、どうも本気のようだね! なら僕も本気で相手をしてあげようじゃないか! 七体全てのワルキューレを出そう!」 6体のワルキューレが、ブルーを囲むように近づいてくる。 一体はギーシュの近くに居た。 ナイフによる飛び道具を警戒しているのだろう。 ブルーも流石に焦り始める。 『剣』はギーシュに当たれば間違いなく致命傷を与えるが、 金属で出来たこのワルキューレとか言うゴーレムに対しては効果が薄い。 それが七体。ギーシュへの直接攻撃も警戒されている。 絶体絶命という奴であった。 (他の術を使えば――) が、辺りを見回してみる。 ワルキューレを全員倒せるような術では、周囲にいる生徒達にすら死者を出すだろう。 「アカデミー」とやらの事を抜きでも、それは出来そうにない。 一体一体倒していったとしても、途中で術力が切れそうである。 ワルキューレを一撃で倒せるような術では、術力の消耗が大きい。 青銅の拳に殴られ、吹き飛ばされる。 「ぐっ……」 倒れていると、近い位置にいたワルキューレが追撃をかけてきた。 ゴーレムの足が、ブルーの左腕の骨を踏み砕いた。 「……ッ!」 激痛に耐えかねて転がるが、結果的にそれで距離が取れたようだ。 だが、状況が好転したわけではない。 ギーシュは勝利者の余裕をたっぷりと含ませて言ってくる。 「ふん、不遜な口をきいていた割には大したことはなかったね。 もう終わらせるとしよう!」 ワルキューレ達が、一斉にブルーへと殺到した。 「オールド・オスマン」 扉の向こうから、ミス・ロングビルの声が聞こえてくる。 「なんじゃ?」 「ヴェストリの広場で、決闘が行われているようです。 大騒ぎになっていますが、生徒達に邪魔されて止めることが出来ません」 それを聞いて、オスマンは呆れと嘆きを表へ出した。 「全く、あの馬鹿共が。 暇があるならもっと有意義なことをしろってもんじゃ。 で、誰が暴れてるんだね?」 「一人はギーシュ・ド・グラモンです」 オスマンは記憶の糸をたどり、顔と名前を一致させる。 「あのグラモンの所の馬鹿息子か。 どうせ女がらみのトラブルじゃろ。で、相手は誰じゃ?」 「それが……メイジではなく、ミス・ヴァリエールの使い魔のようなのです」 オスマンは、隣にいたコルベールの方を向いた。 コルベールもまた、こっちを見返していた。 思うところは同じだったらしい。 外からの声が続けてくる。 「決闘を止めるために、『眠りの鐘』の使用許可を求めていますが……」 その声に対し、オスマンは即座に返した。 「アホウ。子供のケンカ如きで秘宝を使ってどうするんじゃ。 放っておきなさい」 「わかりました」 ミス・ロングビルが去っていく足音が聞こえた。 オスマンは再びコルベールと顔を見合わせると、杖を振った。 壁に掛けられた鏡に、広場の様子が映し出される。 ルイズは不安だった。 不安は、自らの使い魔が死にかけていると言うことだった。 どう考えてもそれが正しい。 しかも、何故か術を使おうとしない。 死にかけてまで、術を使わない理由にはならない。 自らの初めての成功の証が、消えてしまうことがこの上なく恐ろしかったのだ。 なので、目を閉じていた。 が、突如走った閃光が、閉じていた彼女の目を開かせる。 そこには、光り輝く剣を片手で構える使い魔の姿があった。 ブルーはある一つのことを閃いた。 ここに来てからというもの、やたらと閃いているような気がするが、 それは今はどうでも良い。丁度良い術があったのだ。 大規模ではなく他人を巻き込まず、 ワルキューレ達を一撃で倒せる訳ではないが、 防御も兼ね備えた術。 更に良いことに、術を使っているとは思われづらい。 左手は折れているようだったが、右手は動かせる。 問題はない。 フラッシュボムを上に投げる。 ここに来たときに大したものは持っていなかったが、 これはあった。 「《光の――」 詠唱を始めると同時に、閃光が走る。 その閃光を目を閉じたブルーは見る事はなかったが、 周囲の観客や、ギーシュの目を眩ますことは出来たようだ。 「―剣》!」 振り上げた右手に、《光の剣》を作り出す。 閃光によって、彼らは目を閉じた。 が、暫くして閃光は収まったことを知ると、彼らは目を開けた。 ボロボロにやられていた平民が、また剣を持っていた。 どうやらまだやるつもりらしい。 同じように閃光から立ち直ったギーシュが、芝居がかった口調で言う。 「……ふふ、褒めてあげよう。ここまでメイジに刃向かうとは、むしろ賞賛に値するね。 だが、もうろくに動けないだろう」 そして、再びワルキューレ達を操り始める。 ワルキューレ達が再び、ブルーめがけて突撃する。 (……なんだ?) ブルーは、自らの身体の異変を感じ取っていた。 身体が軽い。腕の痛みを感じない。 今、自分に襲いかかろうとしているワルキューレ達が遅く見える。 《光の剣》にはこのような効果はない。 だが、取り敢えず今は考えることは止め、目の前のゴーレムに向き直った。 身体を感じたままに動かす。 ワルキューレの拳を回転してかわし、そのまま斬る。 次に来たワルキューレを袈裟切りにする。 そして、返す刃の逆袈裟切りを身体ごと回転して繰り返し、残りの4体を切り捨てる。 ギーシュの眼が、驚愕に見開かれた。 「わ、ワルキューレッ!」 一瞬のうちに6体のワルキューレを斬られたギーシュが、 薔薇を振って巨大な剣を作り出し、残り一体となったゴーレムに持たせる。 ブルーはそれを見て、高く飛び上がった。 自分でも信じられないぐらい、高く飛んだので驚いたが、 落ち始めると、落下の力も加えて剣を振り下ろす。 迎撃する形で剣を振り上げたワルキューレを、大剣ごと縦に真っ二つにし、 その後剣を横に一閃し、ギーシュ……の持っていた薔薇だけを散らした。 腰を抜かして尻を付いたギーシュに、 ブルーは剣を突きつけて言った。 「まだ続けるか?」 その場に居た、本人を含めた誰もがギーシュの敗北を認めた。 前ページ次ページゼロの使い魔・ブルー編
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早朝。日課になりつつある朝の洗濯を終えた徐倫が部屋に戻ると、既にルイズは机に向かっていた。 「……洗濯、終わったんだけどォ」 「先に食堂行ってて。すぐに行くから」 ルイズが机の上の魔道書に集中したまま、おざなりに返事を返すのを聞いて、徐倫はいつもの如く軽く肩を竦めた。 お言葉に甘えて、一人朝食に向かう。 教室での一件からここ数日、ルイズの生活リズムは変わりつつあった。 まず、破滅的に寝起きの悪い彼女が自力で、しかも早起きをするようになった。 徐倫は日中はメイジ達に混ざって魔法の学習をしたいので、洗濯は朝食前の朝早くに済ませる事にしている。ルイズはそれと同じくらいの時刻に目覚めるようになったのだ。 それからは、朝食の時間ギリギリまで授業に使うテキストや別の魔法指導書などを使って魔法の勉強をするようになった。 夜はその逆。深夜近くまで部屋の明かりは消えない。 着替えや身の回りの世話こそ、使い魔の名目で徐倫に手伝わせているルイズだが、その日々の生活姿勢が激変した事は確かだった。 そして、その切欠が徐倫の影響によるものだという事も……。 徐倫も、ルイズが変わった理由を理解していた。 あの時教室で叱責した事でルイズが自分の性格や姿勢を改めた……というワケではない。あれの動機は、『意地』や『反発心』といったものの方が正しいだろう。 教室での一件以来、自分に当り散らす事なく、また必要以上にコミュニケーションを取ろうともしないルイズの様子を見て、徐倫は実感していた。 あの時言われた事ややられた事が悔しくて、それを見返したくて努力している―――そういう意図を感じていた。 正直、あれ以来二人の仲が微妙に気まずいものになったと思うが、同時に何か微笑ましいものを見たような苦笑も湧いてくる。 ルイズの意固地な態度を、徐倫は割りと好ましく受け取っていたのだ。 わがままで意地っ張りな少女だが、徐倫への反発心をヒステリーや八つ当たりに変えるのではなく、正しく努力の方向へ向けている点が、徐倫の中のルイズの評価を改めさせていた。 (結果を出すまでは耐え忍んでやるッ、って意気込みが見えてんのよねェ~……意地っ張りっつーか) メイジではない徐倫には、ルイズが朝晩している自主勉強の内容は分からなかったが『魔法成功率ゼロ』の汚名を晴らす為の努力である事は察せる。 事実、ただ黙々と勉学に励むルイズの胸の内にあるのは、自分を認めようとしない生徒や使い魔の徐倫を結果で持って見返してやろうという意気込みだった。 それを考えると、徐倫は知らず笑みが浮かぶのだった。 (いいわよ、待っててあげる。魔法の一つでも成功させてさァ、『ザマーミロ、これまでの無礼を詫びなさい!』とか言われたら……マジで頭の一つぐらい下げてやるわよ) 皮肉や馬鹿にするような気持ちではなく、徐倫は真摯な心でそう思っていた。 今のルイズの『努力』は、とても気高い。 切欠や動機はともあれ、また結果が出なければ何の意味もない事だとしても、その『努力』の行為そのものは敬意に値すると、そう思っていた。 徐倫自身も気付かず、彼女はルイズを見守る姿勢を取っていた。 教室での一件は、徐倫の中にも小さな変化をもたらしていたのだ。 食堂に顔を出した徐倫を物珍しげに眺める視線は相変わらずだったが、貴族以外はその限りではなかった。 すれ違う給仕達が徐倫に親しげな挨拶をしていく。 それに会釈を返しながら、徐倫は見知った少女の顔を見つけた。 「おはよう、シエスタ」 「あ、ジョリーンさん。おはようございます」 メイドのシエスタは、数日前から徐倫が何度も世話になっている朗らかで優しい少女だった。 ルイズとの確執で食事を抜かれた日、事情を聞いたシエスタは賄いの食事を徐倫に分けてくれたのだ。 貴族の食事と比べて随分質素なものだったが、その味と何より量は徐倫を感激させるほどの物だった。心に染み渡る味に涙が出そうになったほどだ。シエスタは大げさだと苦笑していた。 シエスタを含むメイドや厨房のコック達は、皆気のいい人達だった。 珍獣扱いしかしない貴族や、元の世界の刑務所にいた賄賂で動く看守どもとは比べるまでもない。 徐倫は随分と長い間出会っていなかった、『まともで善良な人間』という奴を見た気がして、また感動しそうになった。この出会いは宝石よりも貴重なのだと本気で思った。 オヤジ臭いセクハラ発言が大好きだが、とても気さくなコック長のマルトーは『綺麗どころが増えて、厨房も華やかにならぁ!』と豪快に笑い、快く徐倫を受け入れてくれた。 久方ぶりに腰を落ち着ける事が出来た徐倫は、以来何度か厨房で食事の世話をしてもらっている。 代わりに、徐倫も時折シエスタ達の仕事を手伝う事にしていた。 「すいません、今、貴族様の朝食を準備している最中なので」 「なら、手伝うわ」 「えっと……じゃあ、お願いします」 徐倫の申し出に、シエスタは遠慮がちに微笑んだ。 甲斐甲斐しく料理を並べていくシエスタの仕事風景を見ながら、徐倫は厨房へ向かった。 控え目な性格のシエスタは、友人が我の強い人間ばかりである徐倫にとって新鮮な存在だった。ひたむきで健気な姿は、実に好ましい。 この異世界を訪れて、まだたった数日。 その間に、徐倫は元の世界とはまた違った人間関係を築いている。 人の出会いは『引力』によって成される―――このハルケギニアにおいても、『引力』は徐倫に奇妙な出会いを呼び込み続けるのだった。 辺境のドライブスルー付きレストランによくいるような、愛想などとっくに使い果たしたウェイトレスよろしく徐倫が適当に料理をテーブルへ並べていると、何処かで騒ぎ声が聞こえた。 視線を送ってみると、いかにも貴族風の少年が二人の少女に怒鳴られ、周囲のギャラリーが冷やかし混じりの笑い声を上げている。 揉め事の前兆だった。 徐倫は何気なさを装ってテーブルを離れ、食堂の隅へ移動した。 ストーン・フリーの糸を床に這わせて、喧騒の方へ向かわせる。魔法という不可思議な力が存在する以上、スタンドも形として見られてしまう可能性もある。徐倫は糸をテーブルの下に隠しながら移動させ、騒ぎの中心を『盗聴』した。 もちろん、揉め事には極力関わりたくないのだが、この場合はそうも言ってられない。 口論する貴族達の傍らで、揉め事に巻き込まれたらしいシエスタが震えていた。 『その香水があなたのポケットから出てきたのが何よりの証拠です!! さようなら!』 丁度その時、小気味の良い音と共に女生徒の一人が少年にスナップの効いた平手をかましていた。 少女は泣きながら走り去る。 徐倫は早くも状況を理解し始めていた。実に分かりやすい。ただの痴話喧嘩だ。 『やっぱり、あの1年生に、手を出していたのね?』 『お願いだよ『香水』のモンモランシー! 咲き誇る薔薇のようなその顔を、そのような怒りに歪ませないでくれよ。僕まで悲しくなるじゃないか!』 そして、今時ドラマでも使わない芝居の掛かった台詞でモンモランシーと呼ばれる少女の怒りを煙に巻こうとしているあの少年は、本物のアホ野郎だとも理解し始めていた。 思わずため息を吐きそうになると、モンモランシーがテーブルのワインを少年の頭にどぼどぼと振りかけて、最後に一言罵って去っていった。 痛快な行動に、徐倫はヒュゥ、と口笛を吹いた。今のはいい。グッド。素晴らしい返答だ。 男に騙された経験のある徐倫にとっては、なかなか胸の空く光景だった。 しかし、その光景をニヤニヤ眺めている余裕はなかった。 『君が軽率に、香水の瓶なんか拾い上げたおかげで、二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね?』 あのアホ野郎が、どういうつもりかシエスタに当たり始めたのだ。 状況は大体理解した。シエスタが取った行動によって、あの少年の二股がバレたのだ。そして、傲慢な貴族はその責任をシエスタへ押し付けようとしている。 徐倫は『糸』を回収すると、颯爽と歩き始めた。 「申し訳ありません……ど、どうかお許しを……」 平民らしく憐れに慈悲を乞うシエスタの姿を見下ろして、ギーシュは自分が『面子』を守れた事に安堵した。 これでいい。優れた貴族である『ギーシュ・グラモン』がドジこいて恋人二人にこっ酷く振られちゃいましたー! などと恥を晒すワケにはいかない。沽券に関わる。 あとは適当にシエスタを脅して、真摯な謝罪をさせ、この場を治めるつもりだった。それによって自らの威厳は保たれるのだ。 「君もメイドなら貴族に話を合わせる機転くらいは持ち合わせていてもらいたいものだ。これは言わば、君の配慮不足。君の重大な責任だよ。深く反省したまえ!」 その筈だった。 「―――二股かけてる、あんたが悪い」 そこに、徐倫が踏み込んで来るまでは。 「そのとおりだ、ギーシュ! お前が悪い!」 「誤魔化そうとしてるの見え見えだぞっ!」 唐突に告げられた見も蓋も無い言葉に、それまでギーシュとシエスタのやり取りで静まり返っていたギャラリーがドッと湧いた。 はやし立てる友人達の言葉に歯軋りし、ギーシュは顔を真っ赤にさせながら徐倫を睨み付ける。 「な、なんだね君は? 粗相をしたメイドを折檻するのを、同じ平民が庇おうというのかね?」 「庇うっていうなら、その通りだけれどね。ドジ踏んだのはあんただけよ、さっさとあの二人に頭を下げてくる事ね」 「なな、何ぉう……っ!」 シエスタを背に隠すように一歩踏み出した徐倫には、地の底から湧き上がってくるような威圧感があった。 長身の徐倫はギーシュとほぼ対等の視点を持っている。常に女性を見下ろす優位な位置に立ってきたギーシュにとって、物理的にも初めて経験する迫力だった。 愛でるべき女性に対して『凄み』を感じて腰が引けているという状況に、精一杯虚勢を張ってギーシュは引き攣った笑みを浮かべた。 「ふ、ふん! そうか、確か君は、あの『ゼロのルイズ』が呼び出した平民だったな」 「……それが? 気が済んだなら、もう行くわ」 聞き慣れたルイズへの蔑称に、徐倫はほんの僅かに眉を動かしたが、厄介事からシエスタをさっさと逃がす為努めて冷静にこの場を離れるよう促した。 馬鹿に構って、自分まで馬鹿を見るつもりはない。 「ああ、行きたまえ。女性とはいえ、粗野な平民に貴族への礼儀を期待した僕が間違っていた。ゼロの使い魔は頭もゼロのようだ、主人によく似ている」 そして、背を向ける徐倫に向かってギーシュは苦し紛れの悪態を吐いて残した。 その侮蔑に、徐倫の足が一瞬止まる。 「……何? 主人が、『何』だって……?」 肩越しに聞き返す徐倫の声から、僅かに滲み出る怒気。 それに気付いたギーシュは、反撃の取っ掛かりを見つけたとばかりに捲くし立てた。 「ほう、一応使い魔かな。主人を馬鹿にされると怒るか。魔法の使えない、『無駄な努力』を積み重ねるゼロのメイジに対しても、それなりに忠誠心はあるのかな? いや、平民だから共感か? ハハハ……」 調子に乗ったギーシュは、饒舌に挑発を繰り返した。 平民が貴族に手を出す筈がない。後々の事を考えれば、恐ろしくて手が出せるはず無いのだ。 徐倫を怒り狂わせ、適当にあしらった後でクールに去る! 眼中に無い、とばかりにッ! ギーシュは、そう計画していた。 しかし、女性を愛する事を信条とするギーシュには予想もつかなかった事態。徐倫はギーシュへ手を出すのを堪えるどころか……逆に躊躇無く思いっきりぶん殴ったのだッ! 「ハハ……ぁぶへェッ!?」 意外ッ! それは右フックッ! 女性の暴力など平手止まりだと考えていたギーシュは、細腕からは想像も出来ないような凶悪な鉄拳を受けて、ドグシャァーーッ! と吹っ飛んだ。 周囲の友人を巻き込み、鼻血を撒き散らして昏倒する。 「で、『何』だって? ……『誰』が『何』って言ったんだ、お前……」 ”ド ド ド ド ド ド ド ……!” 地響きのような威圧感が、ギーシュを見下ろす徐倫の全身から立ち昇っていた。 「『ゼロのルイズ』……それは『いい』 結果を出せない奴が馬鹿にされるのは仕方の無い事だ。その『屈辱』を覆して見せるのは彼女自身だ。あたしが怒る領分じゃあない……」 鼻を押さえて蹲る見下ろす徐倫。しかし、その顔に映っているのは、貴族を地に伏せさせた優越感などではない。 静かな、マグマのように地面の下で煮え滾る『怒り』だった。 「だが、『無駄な努力』……コイツはいただけないわ。 例え誰であろうと『努力』を嘲笑う事は許せない。報われない結果ばかりでも、成功に向けて努力するひたむきな『姿勢』を『侮辱』する事だけは……」 徐倫は静かにギーシュの元へ歩み寄ると、右足を後ろに退いた。 「特に、その『努力』を最も近くで見てるあたしの前で、テメェー……『ルイズ』の努力を侮辱する事だけはッ、あたしが許さねェェーーッ!!」 ボグシャァアアーーッ! と、振り上げた右足がギーシュの体を掬い上げるように蹴り飛ばした。 凄まじい怒りの篭った蹴りを受けて、ギーシュは甲高い悲鳴を上げながら壁へと激突する。 「アギッ……ぐげッ……! あ、ああ足蹴にしたなぁ、この僕をォォ!! 『女子』のクセに『男子』であるこの僕をォォッ!!」 たった二発で足元が定まらない程のダメージを受けたギーシュは、それでも目の前の平民に対する怒りで立ち上がった。 鼻と口から血をボタボタ垂れ流しながら、徐倫を睨みつける。 「『決闘』ッ、『決闘』だぁあああああ!! 君に『貴族』に対する礼儀をッ、『男子』に対する敬意を教えてやるッ!! 例え女であっても……ギーシュ、容赦せんッ!!」 ギーシュの宣告に、シエスタや周囲の貴族達すら顔色を変えた。 貴族が決闘をする事は禁じられている。何より平民にとって、メイジである貴族との戦闘は死を意味する! しかし、元より怒りによって動いていた徐倫だけは、その宣告を躊躇い無く受け入れていた。 「全く、やれやれって感じだわ……。『決闘』なんて回りくどい言い方をしなくても、『喧嘩』ならあたしから売ってやったのに……」 決闘の場所を告げて去っていくギーシュの背中を、徐倫は静かな怒りを胸に秘めて見据えていた。 徐倫とギーシュ。切欠は違えど、二人が闘う為の理由は一つ。駆り立てる意思は一つ。 『侮辱』には報いを―――! To Be Continued →
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トリステイン魔法学院。 ここでは毎年恒例、使い魔召喚の儀式が行われていた。 普通なら何事もなく終わるはずだった。 しかしッ!今年はそうはいかなかったッ! 学院創立以来の問題児ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールッ! 成績優秀ッ!素行良好ッ!されど魔法を使えば即爆発ッ! 付いたあだ名は『ゼロのルイズ』! そんな彼女の召喚である。何が起こるか誰だって見物したいだろう。おれだってしたい。 しかし彼らの予想を遙かに超えることを彼女はしでかしたのだッ! なんとッ!よりによってッ!何の取り柄もないッ!『平民』を召喚したのだッ! 「こいつ平民を召喚したぞ!しかもあの格好は・・・変態だッ!」 「さすがゼロのルイズ!変態を召喚するなんて!」 「そこに痺れない憧れないィーー!」 ルイズと呼ばれた少女は必死に言い返す。 「なによ!ちょっと間違えただけじゃない!」 「どこがちょっとだ!」 この喧噪の中、男が動いたのに気付くものはいなかった。 彼の名はメローネといった。 職業は『暗殺者』 もちろんただの暗殺者ではない。 彼には『スタンド』と呼ばれる能力があった。 能力の名は『ベイビィ・フェイス』 パソコンに寄生し物体をバラバラにし、組み替える能力。 さらに、女性の体を媒体とし、『息子』を作り上げる能力もある。 言うことは聞かないが、教育すればある程度制御でき、万が一やられても自分は無事。 さらに成長した別の『息子』が標的を殺す。 まさに暗殺のためにあるような能力。 欠点はあるがほとんど無敵。 彼は自らの能力に酔っていた。 しかし、彼は死んだ。 気にもとめていなかった『新入り』の能力によって。 死んだはずだった・・・ 目を開けると、そこには青空が広がっていた。 「なんだ・・・?俺は死んだはず・・・?」 周りを見るとローブのようなものを着た群衆。 そして、言い合いをしている少女と中年。 「地獄・・・ではないな。明るすぎる。 だとしたら天国・・・?まさかな。」 彼は暗殺者だ。天国なぞ死んでもいけまい。 そんなことを考えているうち、少女が近づいてきた。心なしか顔が赤い。 「あ、あんた、感謝しなさいよね・・・。貴族にこんな事されるなんて・・・。普通は一生ないんだからっ!!」 少女はそういうとなにやらつぶやきだした。 「おい、なにを言って・・・」 その瞬間少女の唇が彼の唇をふさいだ。 「なっ、何をするだァー!いっ、いきなりキスなんてッ!」 その瞬間、彼の左手に激しい痛みが走った! 「なっ、これはッ!が、ぐわアァァァァァァァァァァァ」 そのとき彼の左手には『使い魔のルーン』が刻みつけられていた! 「ミスタ・コルベール。終わりました。」 顔を赤くしながら少女が言うとコルベールと呼ばれたオッサンはその『使い魔』を見て 「ふむ。珍しい形のルーンですね。それでは皆さん、教室に戻りましょうか」 すると、彼らの体が宙に浮いたのだ! 「ルイズ、お前は歩いてこいよ!」 「あいつ『フライ』はおろか、『レビテーション』さえまともにできないんだぜ」 メローネは呆然と見ていることしかできなかった。 そして視線は少女に向いた。 「おい!なんなんだあれは!というかおまえは誰だ!むしろここはどこだ!」 「うるさいわねぇ・・・。まあいいわ。 ここはハルキゲニア大陸トリステイン魔法学院。あんたはなぜか召喚されたの。 そしてわたしはルイズ。あなたのご主人様ね。」 「な、なにを言っている!?全く意味がわからん!ディ・モールト(とっても)意味不明だッ!」 「あーもぅ!詳しい説明は後でしてあげるからさっさと帰るわよ!」 そう言い残すとルイズは歩いていった。